毒矢(読み)どくや

精選版 日本国語大辞典 「毒矢」の意味・読み・例文・類語

どく‐や【毒矢】

〘名〙
① 鏃(やじり)に毒を塗った矢。毒箭。どくし。
※氏郷記(17C中‐後か)下「此時毒矢を射させんとて、夷人を少々召連られ」
② 転じて、人を傷つけることば態度のたとえ。
※名張少女(1905)〈田山花袋〉四「投げるやうに夫は言った。その毒矢に烈しく貫かれたのは、私の胸」

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デジタル大辞泉 「毒矢」の意味・読み・例文・類語

どく‐や【毒矢】

矢じりに毒を塗った矢。

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改訂新版 世界大百科事典 「毒矢」の意味・わかりやすい解説

毒矢 (どくや)

鏃(やじり)に毒物を塗った矢をいい,現在でも一部の狩猟民の間で,獲物の捕殺用に使われている。かつては戦闘用の武器としても用いられ,ラテン・アメリカ,アフリカを訪れた探検家や〈征服者〉が最も恐れたのは,かすかな風切り音とともに突如飛来する,この毒矢であった。ギリシア語では弓矢をトクソンtoxonというが,その中性の形容詞形トクシコンtoxikonは,すでに古代ギリシアにおいて〈矢毒〉の意味で用いられており,毒矢の歴史の古さを示している(ドイツ語で〈毒〉を意味するトクシクムToxikumも,この語に由来)。用いられる毒物の種類は多いが,地域によって明確な違いがあり,南アメリカではクラーレ,東南アジアではクワ科Antiaris toxicariaの乳状の樹液イポー(ヒポー,ウパスとも呼ぶ)が用いられる。アフリカではキョウチクトウ科の植物が中心であり,Tanghinia venenifera種子から採るタンギンケルベラ・タンギンともいう),Strophanthus gratusの種子やAcocanthera schimperiなどの樹皮樹幹から採るウワバイン,Strophanthus hispidusの種子から採るケルベラマメ科フジ近縁Physostigma venenosumの種子であるカラバル豆などが用いられる。東アジアではトリカブトの根から採る烏頭(うず),附子(ぶし)が主役で,アイヌもこれを用いた。
 →吹矢 →弓矢
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普及版 字通 「毒矢」の読み・字形・画数・意味

【毒矢】どくし

どく矢。

字通「毒」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の毒矢の言及

【採集狩猟文化】より

… 後期旧石器時代の末には弓矢というまったく新しい武器が発明され,中石器時代をつうじて世界中に普及した。弓矢の普及とともに毒矢の使用も始まったと考えられる。槍とちがって,弓矢はより遠くから正確にかつ高速で獲物を射ることができるが,破壊力は小さく,したがって毒矢を併用することによってはじめて,狩猟効率を高めることができたからである。…

【毒】より

…シャーマンや呪術師,妖術師によって使われる〈毒〉は,つねに目に見えるとは限らない。部族社会での病気あるいははしばしば彼らによって〈毒〉を盛られたとの解釈をもたらすが,この場合の〈毒〉は目に見えぬ毒矢や毒虫(ヘビやサソリなど)による攻撃,さらには言葉自体の中に〈毒〉を含む(呪詛(じゆそ))とさえ考えられ,説明される。呪術,妖術による〈毒〉はしばしば呪薬としてみられる。…

※「毒矢」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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