殿上(読み)てんじょう

精選版 日本国語大辞典 「殿上」の意味・読み・例文・類語

てん‐じょう ‥ジャウ【殿上】

〘名〙
宮殿、または殿堂の上。
※続日本紀‐養老四年(720)正月甲寅朔「大宰府献白鳩。宴親王及近臣於殿上」 〔戦国策‐燕策・王喜〕
宮中禁中
※宇津保(970‐999頃)内侍督「中将殿上にまゐりて、仁寿殿の御まへにさぶらひ給ふ」
③ 「てんじょう(殿上)の間」の略。また、上皇などの御所の、それに準ずる所。
※伊勢物語(10C前)六五「殿上にさぶらひける在原なりけるをとこの」
④ (━する) 「殿上の間」に昇ること。また、それを許されること。昇殿
蜻蛉(974頃)上「これかれぞ、殿上などもせねば」
⑤ 昇殿を許された人。殿上人
※多武峰少将物語(10C中)「殿上の君、しかじかと、入道の君に語り給ふ」
⑥ (殿上のことをつかさどるところから) 「くろうどどころ(蔵人所)」の異称
※中右記‐嘉保三年(1096)二月二二日「是、令殿上別当給也」
中世、住宅内部の室の一つ。中門廊の近くにあり、身分や格の低い人々が主人に対して挨拶する場、またはその控室
看聞御記‐文安四年(1447)一一月二六日「番匠大勢参、殿上室礼〈番衆所〉、車宿庁屋に造」

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デジタル大辞泉 「殿上」の意味・読み・例文・類語

てん‐じょう〔‐ジヤウ〕【殿上】

《「でんじょう」とも》宮殿、または殿堂の上。
宮中。禁中。
殿上の」の略。
2のことをつかさどるところから》蔵人所くろうどどころの異称。
殿上の間に昇ること。また、それを許されること。昇殿。
来年は帰り上りて―して、五位蔵人になりて」〈狭衣・一〉
殿上人てんじょうびと」の略。
「―の逍遥侍りしとき、さらなり」〈大鏡伊尹

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普及版 字通 「殿上」の読み・字形・画数・意味

【殿上】でんじよう(じやう)

御殿の内。〔戦国策、燕三〕軻、秦王をふ。秦王、(めぐ)りて走る。群臣愕し、~盡(ことごと)く其の度を失ふ。秦の法、群臣殿上に侍する尺兵をも持することを得ず。中兵を執り、皆殿下に陳(つら)ね、詔るに非ざれば上るを得ず。~以て軻をつ無し。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「殿上」の解説

殿上
てんじょう

侍所とも。公卿・殿上人・蔵人(くろうど)など側近の詰所。平安中期以降は,おもに内裏の清涼殿の南庇にある殿上の間をさす。平安初期の史料に,豊楽(ぶらく)殿・紫宸(ししん)殿・武徳殿・仁寿(じじゅう)殿などの殿上がみえるが,天皇の出御する殿舎の殿上に伺候することに意味があった。平安中期以降,内裏の影響をうけて院・女院・東宮にも殿上が設けられ,中宮・親王家・摂関家などの侍所にも殿上と同じ機能がある。

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世界大百科事典(旧版)内の殿上の言及

【殿上の間】より

…内裏にある清涼殿の南廂(ひさし)の部屋。会議室または控室の用をし,公卿や昇殿を許された四位・五位の殿上人,蔵人(くろうど)が祗候するところ。東西6間の細長い部屋で,北側は白壁で身舎(もや)との間を仕切り,南は簀子がなく,神仙門で東西に区切り,東側に小板敷,西側に沓脱(くつぬぎ)の縁をつける。…

※「殿上」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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