殺狗記(さっくき)(読み)さっくき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「殺狗記(さっくき)」の意味・わかりやすい解説

殺狗記(さっくき)
さっくき

中国、明(みん)初の戯曲。徐(じょき)の作。元(げん)の雑劇『楊氏女殺狗勧夫(ようしじょさっくかんぷ)』を南曲に改編したもの。富家の孫華が実の弟の孫栄を疎外し、無頼漢と親しくするのを、妻の楊氏が見かね、殺した犬に人の着物を着せ、裏門に捨てておく。夜遅く酒に酔って帰った孫華は、これに驚き、殺人嫌疑のかかるのを恐れて、無頼の友に処置を頼むが、取り合ってくれず困惑する。ところが弟の孫栄が危難をも顧みず、死体を背負って、郊外に捨てに行く。孫華は初めて弟の誠意に打たれ、行いを改める、というのがその大筋である。『琵琶記(びわき)』などとともに元末明初の戯曲の傑作に数えられる。元の雑劇に比べて読書人的な雰囲気が濃い。

[岩城秀夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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