残菊物語(読み)ざんぎくものがたり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「残菊物語」の意味・わかりやすい解説

残菊物語
ざんぎくものがたり

新派戯曲村松梢風(しょうふう)が1937年(昭和12)9月『サンデー毎日』増刊に発表した小説を巌谷(いわや)三一(慎一)が脚色。同年10月東京・明治座で、花柳(はなやぎ)章太郎(菊之助)、水谷八重子(お徳)、喜多村緑郎(きたむらろくろう)(5世菊五郎)らで初演。5世尾上(おのえ)菊五郎の養子菊之助は義弟(後の6世菊五郎)の乳母(うば)お徳と恋に落ち、養父に勘当されて大阪へ落ちる。5年後、辛苦のかいあって養父に呼び戻されるが、肺を病むお徳は身を引き、さらに2年後、養父とともに華々しく大阪に乗り込んできた菊之助に抱かれて息を引き取る。新派昭和期の代表的な純愛物。39年の溝口健二監督、花柳・森赫子(かくこ)主演の映画化は、日本映画史上の名作の一つに数えられている。近年では新脚色による上演も多い。

[土岐迪子]

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デジタル大辞泉 「残菊物語」の意味・読み・例文・類語

ざんぎくものがたり【残菊物語】

村松梢風短編小説、および同作を表題作とする小説集。作品は昭和12年(1937)9月、雑誌「サンデー毎日」増刊号に掲載。作品集は翌年刊行。梨園舞台に、歌舞伎俳優2代目尾上菊之助悲恋を描く。映像化作品も多く、昭和14年(1939)公開の溝口健二監督の映画が有名。

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デジタル大辞泉プラス 「残菊物語」の解説

残菊物語

①村松梢風の短編小説、および同作を表題作とする小説集。1937年発表、翌年作品集を刊行。歌舞伎俳優、2代目尾上菊之助の悲恋を描く。
②1939年公開の日本映画。①を原作とする。監督:溝口健二、脚色:依田義賢、撮影:三木滋人。出演:花柳章太郎、高田浩吉、伏見信子、森赫子、梅村蓉子、志賀廼家弁慶ほか。
③1956年公開の日本映画。①を原作とする。監督:島耕二、脚色:依田義賢、撮影:長井信一、録音:海原幸夫。出演:長谷川一夫、淡島千景、阿井美千子、三田登喜子、中村玉緒、吉川満子、浪花千栄子ほか。第11回毎日映画コンクール録音賞受賞。
④1963年公開の日本映画。①を原作とする。監督:大庭秀雄、脚本:依田義賢、撮影:厚田雄春。出演:市川猿之助、岡田茉莉子、嵐寛寿郎中村芳子津川雅彦、北上弥太朗、織田政雄ほか。

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世界大百科事典 第2版 「残菊物語」の意味・わかりやすい解説

ざんぎくものがたり【残菊物語】

戯曲。4幕8場。村松梢風原作,巌谷慎一脚本。1937年(昭和12)10月東京明治座初演。配役は尾上菊之助を花柳章太郎,お徳を水谷八重子,5世尾上菊五郎を喜多村緑郎。実話をもとにした芸道物の一つで,《鶴八鶴次郎》とともに昭和新派の名作としての定評を得た。5世菊五郎の養子の菊之助と乳母お徳の悲恋が中心で,菊五郎の勘気にふれた菊之助はお徳とともに大阪で5年間の辛い生活を送る。お徳は愛する菊之助を世に出すため一身を犠牲にして菊之助を東京の檜舞台へ復帰させる。

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