歩道(読み)ほどう

精選版 日本国語大辞典 「歩道」の意味・読み・例文・類語

ほ‐どう ‥ダウ【歩道】

〘名〙
① 人が歩行しやすいように切り開いた道。
米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉三「樹間の歩道には、中に一条石片を敷く」
② 人の歩行の安全のため、道路を区切って人の歩くところと定めた部分人道
※東京風俗志(1899‐1902)〈平出鏗二郎〉上「一条の大道を割して中央を車道とし、両側を歩道とす」

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デジタル大辞泉 「歩道」の意味・読み・例文・類語

ほ‐どう〔‐ダウ〕【歩道】

人が歩くように車道と区別して設けた道。人道。「横断歩道」→車道
[補説]書名別項。→歩道
[類語]人道

ほどう【歩道】[書名]

佐藤佐太郎の第1歌集。昭和15年(1940)刊。

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改訂新版 世界大百科事典 「歩道」の意味・わかりやすい解説

歩道 (ほどう)

もっぱら歩行者が通行するための道路の部分をいい,道路と道路沿いの建物敷地とが接する部分,すなわち道路の両側または片側に設置される。歩道は,中央の車道から一段高くして舗装することが多いが,その理由は,段差をつけることによって車両の安易な乗入れを防ぎ,路面を流れる雨水から絶縁させて,歩行者の便宜に供するとともに,隣接する建物敷地への雨水の流入を防ぐなどの点があげられる。このような整備手法は,現在の日本では,道路法(1952公布)に基づく道路構造令によって規定されている。なおこの言葉は,一般的には,より広い意味で使用され,主として歩行者の通行に供するための道を総称していうことがある。歩行者専用道(公園,住宅地,繁華街などで,自動車の通行が禁止され,歩行者のみが通行できる道路),遊歩道プロムナード),緑道などの道路法上の特殊道路として取り扱われるものや,建物敷地における舗装された歩行用通路あるいは園路などは,その範疇に入る。

 歴史的にみると,歩道の成立はヨーロッパにおいてきわめて古く,馬車の利用の発達していた古代ローマの都市はいうまでもなく,それ以前のエトルリアの都市の遺跡においても歩道をもった幹線道路が発見されている。古代ローマ都市の歩道はその技術を継承したものであろうといわれている。これに対して,東洋の諸文明では歩道の存在は明らかでない。とくに日本では,古来一貫して,道そのものが広義の歩道を意味してきたとみられる。そのため,日本独自の技術としては,歩車道を分離して整備する道路築造法は育たなかった。特例としては,交通難所の打開策として車道を石材で舗装した事例が認められる程度である。京都市山科付近の日ノ岡峠に残されている車石はその例である。日本の街路で歩道が最初につけられたのは,幕末から明治初頭にかけて作られた外国人居留地においてであろう。以後その近代的街路整備技術を取り入れて新市街地の都市計画に適用し,逐次一般化されてきたとみられる。なお近代的道路構造の法制化は,まず1886年に内務省訓令によって道路築造保存方法を指定したのが端緒であって,以後,1919年の旧道路法の制定を経て今日に至っている。

 馬車の通行と歩行者の通行の分離に始まった歩道の整備は,交通の自動車化(モータリゼーション)にともなって新しい局面を迎えた。すなわち自動車通行量の急激な増大,車両性能の向上や大型化などに伴って,歩車分離のない旧態の道路では,歩行者の安全の確保が困難になり,歩道の重要性がよりいっそう高まることとなった。また,自動車通行中心の道路からなる都市は人間生活を圧迫するという反省も生じた。そこで歩道の整備とあわせて,植栽,案内標識,道路照明,バス停留所など付帯設備を充実し,隣接する建物の前庭の公共化を行い,老人や身体の不自由な人々も安心して通行できる条件を整えるなどの総合的な歩行環境整備を進める方向が,今や世界的な傾向となってきている。

 また歩道は,その地下に沿道の建物に供給される電気,電話,ガス,水道などのケーブル管路が多数埋設されるなど,都市空間における重要な機能ももっている。このため,地方部などで歩行者が少なく,付帯施設もない道路では,歩道の幅は1~1.5mあれば足りるが,都市内の道路で,しかも街路樹を設ける場合には,最低でも3m,一般には4.5m以上の幅が必要である。なお,自転車自動車交通と分離するため,歩道の通行を認めることが多いが,この場合の歩道は自転車歩行者道と呼ばれる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「歩道」の意味・わかりやすい解説

歩道
ほどう
footway

縁石(ふちいし)線、柵(さく)、その他これに類する工作物によって区画され、もっぱら歩行者の通行の用に供することを目的とする道路の部分をいう。その幅員は道路構造令(1970)第11条第3項で、歩道の幅員は2メートル以上、歩行者の多い道路では3.5メートル以上と定められている。道路構造令には歩道のほかに「自転車歩行者道」という「自転車及び歩行者の通行」のための道路の部分が別に定義されており、その幅員は3メートル以上、歩行者の多い道路では4メートル以上とされている。歩道は歩行者の通行を目的とする都市施設であるが、自転車歩行者道においては自転車の通行も認められる。さらに、舗装は交差点の多い道路では見通し距離を増大させて自動車走行の安全性を高める役割をもつ。交通安全施設等整備事業により、1965年度(昭和40)以降、第一次三か年計画から第六次五か年計画(途中で七か年計画に改定。1997~2003)まで6回にわたる計画が逐次策定され、歩道の整備拡充が図られてきた。

[吉川和広・小林潔司]

 2003年(平成15)に制定された社会資本整備重点計画のなかで歩道整備の基本的な考え方が定められ、2009年に策定された社会基本整備重点計画に基づいて歩道整備が行われている。2000年に交通バリアフリー法が施行され、特定旅客施設と目的施設との間の経路を特定経路とし、重点的に道路と歩道の段差を緩和したり、歩道の平坦部を十分に確保することが求められた。さらに「特定経路」以外の一般の歩道にもバリアフリー化が進められている。道路交通法上、自転車は軽車両と位置づけられ、歩道と車道の区別があるところでは車道を通行するのが原則である。ただし、道路標識等により自転車の通行が許可されている歩道においては、通行すべき部分が指定されているときはその指定された部分を、指定されていない場合は歩道の中央から車道寄りの部分を徐行しながら通行しなければならない。自転車事故が増加するとともに、自転車が歩道を無秩序に通行している実態を踏まえ、2007年(平成19)6月14日に道路交通法の一部を改正する法律が制定され、自転車利用に対する規制が強化されている。

[小林潔司]

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