ほ‐へい【歩兵】
〘名〙
① 徒歩で戦う兵。雑兵(ぞうひょう)。足軽(あしがる)。
※将門記(940頃か)「先づ歩兵を寄せて略ぼ合戦せしめ」 〔六韜‐犬韜・戦歩〕
② 江戸幕府の職制で、
歩兵隊を組織する兵士。一五〇俵高、役扶持一〇人扶持であった。
※懐中便要(1858)布衣以下大概順(古事類苑・官位七七)「歩兵、百五十俵高、御役扶持十人扶持」
③ 旧日本
陸軍の兵制で、
小銃・機関銃・歩兵砲などをもって火戦および白兵戦を行なう
兵種。
※東京曙新聞‐明治一一年(1878)八月二四日・号外「又た暴徒の一手は近衛歩兵の営門に迫りて」
※寒川入道筆記(1613頃)落書附誹諧之事「くらひなくて王に近付ためしには歩兵もなれは金とこそいへ」
ふ‐ひょう ‥ヒャウ【歩兵】
〘名〙 (「ぶひょう」とも)
※蒙古襲来絵詞(1293頃)下「はらひのけ候は歩兵(フヒャウ)とおぼえ候」
② 将棋で、歩(ふ)のこと。
※寒川入道筆記(1613頃)愚痴文盲者口状之事「さる程に金をあひにはるかと見れば歩兵をはる」
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歩兵
ほへい
infantry
陸軍の主柱的兵科。旧ソ連軍では狙撃兵という。歴史的にみると,古代では歩兵が戦闘のほとんどすべてを占めたが,中世の封建時代から近代初期にかけては,騎兵が主で歩兵は協力兵科となった。火薬の発明と銃,砲の発達によって再び歩兵は主兵科となり,最近まで砲兵,戦車兵などとの緊密な共同のもとに,火戦および白兵戦によって戦闘に最後の決を与えるものであった。第2次世界大戦後,歩兵は一時軽視されたが,最近ではゲリラ戦への対応のために,軽火器武装で機動性に富むその役割が再評価されだした。また対戦車兵器の発達に伴い戦車と歩兵の共同が再重視されるようになった。しかし歩兵も装甲兵員輸送車,装甲戦闘車に搭乗することが多くなった。
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歩兵
ほへい
infantry
陸軍の兵種の一つ。長い間陸軍兵力の中心的位置を占め、密集・疎開の二戦闘方式を原則として採用し、敵兵力の撃滅・駆逐を図り、最終的には白兵戦によって勝敗の決着をつけることが最大の任務とされた。陸軍の近代化が進められる過程で、軽・重機関銃、迫撃砲、対戦車砲等の装備による打撃力充実と装甲車両導入による機動力向上が求められた。第二次世界大戦後アメリカ、ソ連等核保有国を始め先進国では歩兵の役割は、核戦力の比重が増大するにつれて低下し兵力削減の傾向が見られたが、第三世界においてはゲリラ戦や内戦への投入に見られるようにその役割は依然として大きい。なお、自衛隊は歩兵を普通科と呼称している。
[纐纈 厚]
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歩兵【ほへい】
陸軍の主兵。兵のなかでは最も古い歴史をもつ。大きな楯(たて)・槍(やり)を持ったスパルタの歩兵は古代国家の象徴。中世では騎兵が主兵。現在は第一線で小銃・機関銃・歩兵銃などを武器とし,火戦・白兵戦を行う。陸上自衛隊では普通科と呼ばれる。→歩兵操典
→関連項目軍隊|師団|特科部隊|砲兵|陸軍
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デジタル大辞泉
「歩兵」の意味・読み・例文・類語
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ほへい【歩兵 infantry】
陸軍の兵種(職種)の一つで,徒歩で戦闘するところから歩兵という。自衛隊では普通科といい,ロシアでは狙撃(そげき)兵と呼ぶ。歩兵は,陸軍の兵種の中でもっとも大きな勢力をもち,近距離に対峙した敵との戦闘に続いて,白兵戦闘(銃剣突撃)によって敵を撃破し勝利を収めようとする兵種である。歩兵は各兵種の中では歴史的にもっとも古い。
【歴史】
[西洋]
古代ギリシアの都市国家の軍隊の中心は,ホプリテスhoplitēsと呼ばれる重装歩兵であった。
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世界大百科事典内の歩兵の言及
【甲冑】より
…
[当世具足]
室町時代には応仁の乱(1467‐77)後,全国に群雄が割拠し,戦国の争乱に突入した。戦国大名は従来の騎射戦に対して,歩兵による大軍を運用して戦い,槍が多く用いられることになった。そして団体戦において簡略で同一形式の具足の量産が必要となる一方,各武将はそれぞれ自己の存在を示す旗差物,誇張された兜の前立,そして個性豊かな甲冑をもって自己主張する。…
【武器】より
…投擲用の槍は相対的に短い。マケドニア兵が導入した長槍は,密集歩兵戦列が槍ぶすまを作るためのもので,別系統の槍である。古代の剣は両刃で比較的短かったが,スキピオのころからローマ軍団兵は重量のあるイベリア式長剣を採用する。…
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