歩きたばこ禁止条例(読み)あるきたばこきんしじょうれい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「歩きたばこ禁止条例」の意味・わかりやすい解説

歩きたばこ禁止条例
あるきたばこきんしじょうれい

たばこの吸い殻や空き缶公共の場所や道路に捨てることを禁止する条例の一般的な呼び名。いわゆる「ポイ捨て禁止(または防止)条例」といわれるもので、環境庁(現、環境省)の1998年(平成10)4月の調べでは、全国市町村の27%にあたる896市町村にまで広がっていた。こうした動きをさらに進めた条例が2002年(平成14)10月から東京都千代田区施行された「安全で快適な千代田区の生活環境の整備に関する条例」である。千代田区では1999年からいわゆる「ポイ捨て禁止条例」を施行していたが、モラルに期待した罰則のないものであったため、目だった効果は上がらなかった。このため、条例を改め、一定のマナー違反について罰則付きの「ルール」を設けることにしたのである。この条例は、モラルに期待しながら生活環境を向上させることの限界と、罰則付きの規制によって目的を達することの是非という問題を提供している。まさに、喫煙という市民のマナー領域に自治体が介入するという「新しい公共」管理の意味でも注目されている。福岡市、東京都品川区、同杉並区など多くの自治体で同様の条例が制定されている。

 また、2007年5月に世界保健機関(WHO)は、すべての加盟国に対し、飲食店や職場を含む公共スペース内を全面禁煙とする法律を制定するよう勧告した。日本は健康増進法(2003施行)で屋内の受動喫煙防止を「努力義務」にとどめたが、2018年7月に改正され対策の強化が図られた。多くの者が利用する施設の敷地内は原則禁煙、屋内は完全禁煙とされ、罰則規定も設けられた。施行時期は学校、病院、児童福祉施設などや、行政機関では2019年(令和1)7月1日から、その他の施設については2020年4月1日からである。ただし客席面積が100平方メートル以下の既存の小規模飲食店などは経過的措置として適用除外とされた。自治体レベルでは、神奈川県が2009年3月に「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例」を制定している(施行は2010年4月)。

[辻山幸宣]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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