武芸小伝(読み)ぶげいしょうでん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「武芸小伝」の意味・わかりやすい解説

武芸小伝
ぶげいしょうでん

武道書。原名は『干城(かんじょう)小伝』、また『本朝(ほんちょう)武芸小伝』ともいう。全10巻五冊。1714年(正徳4)日夏繁高(ひなつしげたか)の著。1716年(享保1)京都の書肆(しょし)、茨木多左衛門(いばらきたざえもん)・鷦鷯総四郎(ささきそうしろう)から出版。内容は、中世以来のわが国の武術・武芸の流れを、一流の流祖や中興名人、高名な達人ら150名の小伝を中心に、兵法(6名)、諸礼(11名)、射術(30名)、馬術(11名)、刀術(56名)、槍(そう)術(8名)、砲術(8名)、小具足(4名)、柔術(3名)の順に、列伝風にまとめたもので、後の『撃剣叢談(げっけんそうだん)』などの先駆的役割を果たした。繁高は幼名秀一(ひでかず)、通称四郎左衛門。丹波(たんば)(兵庫県)篠山(ささやま)藩の天道(てんどう)流師範、日夏弥助(やすけ)能忠(よしただ)(1625―85)の末子に生まれ、幼より文武に優れ、兵学・歴史にも詳しかったが、ゆえあって国元を出奔し、江戸青山に住んで文筆活動に入り、林信如(のぶゆき)、橘直養(たちばななおかい)らと親交を結び、本書のほか『兵具詠草(へいぐえいそう)』『本朝馬法故実源始(こじつげんし)』『兵家(へいか)記事珠』、『兵家茶話(さわ)』(1721)、『本朝武林原始』(1723)などの著がある。

[渡邉一郎]

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