精選版 日本国語大辞典 「武内宿禰」の意味・読み・例文・類語
たけのうち‐の‐すくね【武内宿禰】
たけしうち‐の‐すくね【武内宿禰】
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大和朝廷初期の伝説上の人物。《古事記》では建内宿禰と記す。タケシウチノスクネ,タケノウチノスクネとも読む。孝元天皇の孫(《古事記》)または曾孫(《日本書紀》)で,景行朝初年,紀直(きのあたい)の女を母として紀国で生まれたとされる。景行天皇の51年正月の宴に〈非常(おもいのほか)に備へて〉門下に侍し忠誠を賞され,同年棟梁の臣となり,記によれば成務,仲哀,応神,仁徳(紀では景行から仁徳)朝の大臣をつとめたという。この間,仲哀死後に神功(じんぐう)皇后とともに神託を聞き,皇后の朝鮮出兵後は,応神即位のために忍熊王(おしくまのみこ)の軍を破り,太子(のちの応神)に従って気比(けひ)大神を拝し,即位へと導く。応神天皇9年,弟の甘美内(うましうち)宿禰に讒されるが,盟神探湯(くかたち)に勝って潔白を示す。仁徳朝にも瑞祥に関連した二つの伝承がある。
《公卿補任》に〈在官244年春秋295年〉と記されているこの人物の物語はもちろん史実とはいえない。仁徳天皇以外はすべて実在しない天皇にかけて伝承が語られていること,忍熊王討伐の話が本来和邇(わに)氏の持っていた伝承であったことなどがその証となる。《古事記》孝元天皇条にはその7人の男子が波多,巨勢(こせ),蘇我,平群(へぐり),葛城,紀など27氏の祖となる系譜を伝える。過去に大臣となった伝承を持つ氏族,大和南西部を中心とした豪族を網羅したこの系譜もまた作為されたものであろう。だが作為にもその目的がなければならない。これについては蘇我氏がその権勢を示すために,蘇我馬子をモデルとして6世紀末前後に作ったとする説,藤原鎌足をモデルとして7世紀末に作られたとする説がある。後者は,系譜や物語にかかわる天皇がほとんど非実在者であること,《風土記》に神功皇后の物語が多く,武内宿禰の記事は絶無なので,両者の結合は記紀成立時であること,文武天皇の宣命に鎌足と武内宿禰とを近侍の重臣として等視する事実のあることなどを根拠とする。しかし蘇我氏の祖先伝承はこれが唯一であることを考えると,ただちに後説にも従い得ない。皇室の姻族として葛城氏を継いだ蘇我氏が,まず葛城氏との血族系譜を作ったのが根幹となっていたはずであり,大臣としての武内宿禰像が成立するのは7世紀後半以後であろう。
執筆者:吉井 巌
→武内宿禰(たけうちのすくね)
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(佐佐木隆)
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…これについては蘇我氏がその権勢を示すために,蘇我馬子をモデルとして6世紀末前後に作ったとする説,藤原鎌足をモデルとして7世紀末に作られたとする説がある。後者は,系譜や物語にかかわる天皇がほとんど非実在者であること,《風土記》に神功皇后の物語が多く,武内宿禰の記事は絶無なので,両者の結合は記紀成立時であること,文武天皇の宣命に鎌足と武内宿禰とを近侍の重臣として等視する事実のあることなどを根拠とする。しかし蘇我氏の祖先伝承はこれが唯一であることを考えると,ただちに後説にも従い得ない。…
…これについては蘇我氏がその権勢を示すために,蘇我馬子をモデルとして6世紀末前後に作ったとする説,藤原鎌足をモデルとして7世紀末に作られたとする説がある。後者は,系譜や物語にかかわる天皇がほとんど非実在者であること,《風土記》に神功皇后の物語が多く,武内宿禰の記事は絶無なので,両者の結合は記紀成立時であること,文武天皇の宣命に鎌足と武内宿禰とを近侍の重臣として等視する事実のあることなどを根拠とする。しかし蘇我氏の祖先伝承はこれが唯一であることを考えると,ただちに後説にも従い得ない。…
…現,御所市古瀬)とした臣姓の有力古代豪族。その祖,巨勢小柄宿禰は,武内宿禰の子と伝承されており,蘇我氏,波多氏,葛城氏らとともに,武内宿禰の後裔と称していた。巨勢氏の本拠地は,曾我川の上流に近い山間で(コセの地名は,こうした地形に基づく),紀伊に至る紀路が走る要衝である。…
…旧郷社。主神は武内宿禰,副神は仲哀,応神両天皇と神功皇后。社伝では天平年間(729‐749)伴行頼の創祀という。…
※「武内宿禰」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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