正本製(読み)しょうほんじたて

精選版 日本国語大辞典 「正本製」の意味・読み・例文・類語

しょうほんじたて シャウホン‥【正本製】

合巻。一二編二五巻六九冊。柳亭種彦作。歌川国貞画。文化一二~天保二年(一八一五‐三一)刊。お染久松夕霧伊左衛門など歌舞伎の世界で著名な七つの話を伝奇的に脚色し、ト書(とがき)道具立てなども記して演劇台本の型を生かした草双紙挿絵の主要人物には当時の人気役者の似顔をあて、芝居の雰囲気を持たせるという、紙上歌舞伎化の趣向の面白さによって好評を博した。書名は脚本風の作品の意。

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デジタル大辞泉 「正本製」の意味・読み・例文・類語

しょうほんじたて〔シヤウホンじたて〕【正本製】

合巻。12編。柳亭種彦作、歌川国貞画。文化12~天保2年(1815~1831)刊。お染久松夕霧伊左衛門など歌舞伎で有名な題材7話を、歌舞伎正本の形で書いた草双紙。

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改訂新版 世界大百科事典 「正本製」の意味・わかりやすい解説

正本製 (しょうほんじたて)

合巻(ごうかん)。12編。柳亭種彦作,歌川国貞画。1815-31年(文化12-天保2)刊。文体を歌舞伎の脚本風に記し,挿絵に歌舞伎の舞台機構,道具立て,役者似顔絵等を効果的に活用した中編小説集。歌舞伎の情話物のお仲清七,小稲判兵衛,お菊幸介,吾妻与五郎,お染久松,夕霧伊左衛門を扱った6話と,前太平記の世界で描いた顔見世物との計7話で構成。歌舞伎趣味を横溢させた新趣向で合巻史上注目される画期的作品。
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百科事典マイペディア 「正本製」の意味・わかりやすい解説

正本製【しょうほんじたて】

江戸時代の合巻柳亭種彦作,歌川国貞画。1815年―1831年刊。12編69巻。脚本風の合巻の意で,楽屋の趣,役者似顔のさし絵,正本式のト書き(とがき),舞台の道具立説明等,合巻に演劇風の色彩を濃く盛り込む。題材も歌舞伎に求めた七つの物語よりなる。当時流行の演劇依存合巻の極致で,長編合巻の嚆矢(こうし)。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「正本製」の意味・わかりやすい解説

正本製
しょうほんじたて

合巻 (ごうかん) 。柳亭種彦作。歌川国貞画。 12編 69巻。文化 12 (1815) ~天保2 (31) 年刊。題名は脚本風に仕立てた合巻の意で,楽屋や舞台をそのまま活用し,挿絵も役者の似顔絵とし,内容も『お仲清七物語』『於菊幸介物語』など歌舞伎の題材から成っている。長編合巻の先鞭をつけた作品。

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世界大百科事典(旧版)内の正本製の言及

【柳亭種彦】より

…演劇好きで,他の芸能娯楽にも趣味をもつ資質が,絵画要素が主位を占め画文が有機的に提携するこの合巻に適合した。特に歌舞伎趣味を極度に発揮した《正本製(しようほんじたて)》(1814)が成功を収めて地歩を確立したが,本書の挿絵を担当した浮世絵師歌川国貞と以後密に提携して,歌舞伎趣向の濃い中短編の佳作《画傀儡二面鏡(えあやつりにめんかがみ)》《御誂染遠山鹿子(おあつらえぞめとおやまがのこ)》などを制作し,彼の特質である江戸初期文芸の知識を生かした品格ある作風で声価を高めた。また,文政(1818‐30)末年合巻界に大作古典の翻案による長編作流行の興起を見て,《源氏物語》に取材し,新趣向を凝らした大作《偐紫田舎源氏(にせむらさきいなかげんじ)》を発表し,大好評を得て合巻界の第一人者となった。…

※「正本製」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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