正多面体(読み)せいためんたい(英語表記)regular polyhedron

精選版 日本国語大辞典 「正多面体」の意味・読み・例文・類語

せい‐ためんたい【正多面体】

〘名〙 面がすべて合同な正多角形で、どの頂点に集まる面の数も等しく、どの頂点における多面角も等しい凸多面体正四面体正六面体正八面体・正一二面体・正二〇面体の五種がある。プラトン立体。〔数学ニ用ヰル辞ノ英和対訳字書(1889)〕

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デジタル大辞泉 「正多面体」の意味・読み・例文・類語

せい‐ためんたい【正多面体】

各面がすべて合同正多角形で、各頂点に同数の面が集まる凸多面体正四面体正六面体正八面体正十二面体正二十面体の5種類がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「正多面体」の意味・わかりやすい解説

正多面体 (せいためんたい)
regular polyhedron

凸多面体において,各面は辺数の等しい正多角形で,各頂点に集まる面の個数はすべて等しいとする。このとき前者の個数をp後者の個数をqとすれば,(pq)は(3,3),(4,3),(3,4),(5,3),(3,5)のいずれかに限られ,これらに対応する凸多面体はそれぞれ4,6,8,12,20個の面をもっている。これらを正四面体,正六面体(立方体),正八面体,正十二面体,正二十面体と呼び,総称して正多面体と呼ぶ。正多面体では,各頂点に集まる面によってつくられる立体角はすべて等しい。また,隣接している二つの面でつくられる角もすべて等しい。図1は正多面体の平行投影による像とその展開図を示したものである。正六面体の各面の中心を頂点とすることにより正八面体が得られ,逆に同様にして正八面体から正六面体が得られるので(図2),正六面体と正八面体は互いに双対的であるという。同様の意味で正十二面体と正二十面体は双対的であり,正四面体と正四面体は双対的である。正多面体には,そのすべての頂点を通る一つの球(外接球)と,そのすべての面に接する一つの球(内接球)があり,これらの球の中心は一致する。この点を正多面体の中心という。外接球の半径が1である正多面体の辺の長さ,表面積および体積は表のとおりである。5種類の正多面体の存在はピタゴラス発見といわれ,ユークリッドの《ストイケイア》もそれを最終巻(第13巻)で詳しく扱っている。また,多種多様な多面体の中に,5種類しか正多面体が存在しないことに神秘性を感じたプラトンは,彼のイデア論において正多面体に大きな意義を与えた。このため正多面体は〈プラトン立体〉と呼ばれることもある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「正多面体」の意味・わかりやすい解説

正多面体
せいためんたい
regular polyhedron

すべての面が互いに合同な正多角形から成り,しかもすべての頂点の周りの面角が等しい多面体をいう。凸正多面体には,正四面体,正六面体,正八面体,正十二面体,正二十面体の5種類しかない。これらをプラトンの立体ということがある。これら凸正多面体の頂点の数 v ,辺の数 e ,面の数 f の間には vef=2 という関係がある (→オイラーの定理 ) 。また上の5つの正多面体について,それぞれ自分自身の上に重ね合せる運動を考えると,これを頂点間の置換とみなせば,この運動は有限群をつくることがわかる。正四,六,八,十二,二十面体を,それぞれ自分自身の上へ重ね合せる運動がつくる有限群の位数は,頂点の数 v と頂点に集まる面の数 g の積によって,それぞれ 12,24,24,60,60となる。正多面体についてのこの有限群のことを正多面体群という。たとえば正四面体については正四面体群などという。なお星形正多面体は,ケプラー=ポアンソの4種類がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「正多面体」の意味・わかりやすい解説

正多面体
せいためんたい

各面がすべて正n角形で、各頂点の周りの正n角形の個数(m)がすべて同じであるような凸多面体を正多面体という。正多面体は次の五つに限る。〔1〕正四面体(n=3,m=3)、〔2〕正六面体(立方体ともいう。n=4,m=3)、〔3〕正八面体(n=3,m=4)、〔4〕正十二面体(n=5,m=3)、〔5〕正二十面体(n=3,m=5)。正六面体の各面の中心を頂点とする多面体をつくると正八面体になり、正八面体の各面の中心を頂点とする多面体は正六面体である。この意味で正六面体と正八面体は、双対(そうつい)の関係にあるという。正十二面体と正二十面体も双対であり、正四面体は自分自身と双対の関係にある。統計調査において標本抽出の際に用いられる乱数さいころは、正二十面体の面に0から9までの数字を2回ずつ記入したものである。

[栗田 稔]


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百科事典マイペディア 「正多面体」の意味・わかりやすい解説

正多面体【せいためんたい】

各面が合同な正多角形で,各頂点における立体角がすべて等しい多面体。正四面体(正三角形4面),正八面体(同8面),正二十面体(同20面),正六面体(正四角形6面,立方体),正十二面体(正五角形12面)の5種しか存在しないことがオイラーの定理から導かれる。→正多角形

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世界大百科事典(旧版)内の正多面体の言及

【位相幾何学】より

…analysis situsという言葉は,20世紀初期まで長く通用していたが,今日この言葉は用いられない。
[位相不変量――オイラー標数]
 正多面体は5種類あり,すべて互いに同相である。どの正多面体についても,その頂点の数をa,辺の数をb,面の数をcとすると,abc=2が成り立つ。…

【プラトン数】より

… なおプラトンの名が冠せられるものに〈プラトン立体Platonic solid(body)〉として知られる図形がある。五つの正多面体(正四面体,正六面体,正八面体,正十二面体,正二十面体)の別称で,《ティマイオス》に記述されていることによるが,正四,六,十二面体はピタゴラス学派の,正八,二十面体はテアイテトスTheaitētos(前4世紀)の発見によるという。ヒッパソスHippasosなるピタゴラス学派の学者が正十二面体の秘密を漏らしたため溺死したという伝承があり,後世ケプラーがこの〈プラトン立体〉を組み合わせて宇宙モデルを構想したことも有名だが,いずれもそこにはプラトン数と同様,数およびその具体化である図形を神秘的なものとして考える態度がうかがえる。…

※「正多面体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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