歌舞音楽略史(読み)かぶおんがくりゃくし

改訂新版 世界大百科事典 「歌舞音楽略史」の意味・わかりやすい解説

歌舞音楽略史 (かぶおんがくりゃくし)

日本音楽の歴史書。小中村清矩述。1888年刊。上下2巻。従来雅楽・能・浄瑠璃など各分野内での歴史書はあったが,それらすべてを包括し,通観したものは存在しなかった。この書は最初の日本音楽の通史といえる。上原六四郎の理論書《俗楽旋律考》とともに,明治期音楽書の双璧といえよう。叙述は歴史書・音楽書・演劇書・随筆などの諸史料をもとに,それらを引用しつつなされている。同時に,古書画をもとにして,長命晏春・川辺御楯えがく挿絵を多数加えて,理解の便をはかった。重野安繹と王堂チャムバレン(B.H. チェンバレン)の序を付す。1928年,岩波文庫に収められた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「歌舞音楽略史」の意味・わかりやすい解説

歌舞音楽略史
かぶおんがくりゃくし

書名。小中村清矩(こなかむらきよのり)著。1888年(明治21)刊。上下2巻。日本音楽の通史を述べた書物として先駆的な文献。諸書より音楽・芸能関係記事を抄出して整理し、簡単に見解を述べる形をとる。記紀の神話時代より稿をおこし、15章を割いて近世小唄(こうた)に及び、沿革総論をもって結んでいる。対象は、書名のとおり音楽だけでなく舞踊・演劇関係をも包含しており、方法論的にも新しい日本音楽史研究の萌芽(ほうが)がみられ、いまなお研究者必読の文献である。ただし雅楽に重点が置かれ、近世邦楽ことに尺八に関する記述は薄い。1928年(昭和3)岩波文庫に収められ、近年復刊された。

[田邊史郎]

『『歌舞音楽略史』(岩波文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「歌舞音楽略史」の意味・わかりやすい解説

歌舞音楽略史
かぶおんがくりゃくし

日本音楽および日本芸能の歴史研究書。小中村清矩 (こなかむらきよのり) 述。 1888年金玉堂印刷。上下2巻。明治以後における日本音楽,芸能の学術研究史上最初の基本書といえるもので,引用資料,図版も多い。

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