機械設計(読み)きかいせっけい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「機械設計」の意味・わかりやすい解説

機械設計
きかいせっけい

製作しようとする機械システムへの要求事項を調査し、その結果に基づき、それら要求を満足するように、各種制約条件のもとで、必要とされる機械システムをつくり出すための創造的なプロセス工程)。

 機械製品は、まず、どのような機械をつくるかという機械の仕様を決め、それを満足するような構造機構を考え、それらの作り方を考えながら、図面に表すというプロセスで設計が行われる。その後、図面を基に、必要な材料をそろえ、部品を加工して、必要な購入部品やユニットとあわせて組立てを行い、最終製品として完成する。その製品は、顧客に届けられる前に、製品としての性能や仕様が満足しているかが検査され、出荷される。

 このような工程のなかで、機械設計は、最初の工程にあり、後に続く、加工工程での加工のしやすさ、組み立てやすさなどに大きな影響を及ぼすことから、非常に重要な工程である。つまり、設計の出来栄えが、後の工程の生産能率に影響し、生産コスト、そして、その製品の性能にも影響を与えることになる。

 機械設計プロセスは、大まかに概念設計、基本設計、詳細設計、生産設計の各工程に分けることができる。

 概念設計では、どのような機能・性能をもった機械が必要とされているのかについて、市場調査を行い、機械に必要とされる仕様を決める。この段階では、すでに使われている原理既存機械要素・ユニットをどのように組み込み、新しい機能を創り出すかを考える。また、新しい原理や機械要素・ユニットを開発してより斬新な機械を実現する必要性についても検討する。

 基本設計では、概念設計で決められた基本構想に基づき、いろいろな発想を繰り返しながら機械の構造・機構を図面化し、さらに良い構造・機構を目ざして、図面を繰り返し変更し、構想案を絞っていく作業を行う。これらアイデアをまとめた図をポンチ絵とよんでいる。

 詳細設計の段階では、基本設計で絞られたポンチ絵を基に、それらの構造・機構の各構成要素の強度、変形状態が、各部の必要とする機能を実現するための許容値に入るように、材料、形状、寸法を決める。また、既存の機械要素・ユニットを使う場合は、それらの技術資料に基づき、機能、コストなどを検討しながら、最適なものを選定する作業を行う。この段階で、与えられた仕様を満足できないことが明らかになったら、より良い構造・機構の再検討を行い、構想の練り直しが行われることもある。

 このようにして、構成要素の形状、寸法、材料などが決まったら、設計書と計画図としてまとめられる。

 生産設計段階では、計画図を基にして、加工のしやすさ、組立分解のしやすさなどを検討して、自社で製作する部品の詳細図面(部品図)を作成する。これらと購入する機械要素・ユニットを基に、機械のユニット部分ごとの部分組立図と機械全体の組立図を作成する。これらの図面には、製作するための情報が盛り込まれており、製作図ともいう。

 以上は、設計プロセスによる設計の分類であるが、設計の種類には、この他にも、各種のものが存在している。たとえば、製品の形態に関する設計内容に基づく種類としては、性能の実現を目ざした性能設計、外観などの設計を行う意匠設計、形を決めていく形状設計、構造の構成要素の配置を決める配置設計などがあげられる。設計の許容基準の違いに基づく種類としては、強度基準を基に設計する強度設計、外力に対する変位を基準にする剛性設計、精度を基準にする精度設計などがある。また設計の対象に基づく種類としては、機構を対象とする機構設計、構造を対象とする構造設計、配管の設計を対象とする配管設計などがある。このように、多種の設計作業が存在している。これらの設計作業を行うには、機械工学だけではなく、電気・電子工学、情報工学、さらには、特許や法規などに関する知識も必要である。

 このように、機械設計といっても、非常に幅広い知識が必要である。機能的性能が高く、寿命が長く、安全で操作性の良い、かつデザイン性に優れ、コストパフォーマンスに優れた機械を設計するには、多くの経験と知識が必要とされている。

[清水伸二]

『三田純義他『機械設計法(機械系教科書シリーズ)』(2000・コロナ社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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