機械要素(読み)きかいようそ(英語表記)machine elements

日本大百科全書(ニッポニカ) 「機械要素」の意味・わかりやすい解説

機械要素
きかいようそ
machine elements

機械を構成している最小単位の機能部品で、略して機素ともいう。複雑な機械にも多くの機械要素が組み込まれており、これらは、国際的にも標準化され、各国の工業規格になっているものが多い。

[清水伸二]

締付け用部品

機械の部品を結合するねじキーコッター、ピン、リベットなどである。機械部品としては小さいが重要なものである。ねじには、ねじ山の形によって三角ねじ角ねじ台形ねじ、のこ歯ねじ、丸ねじなどがある。ねじの頭に十字形の溝をつけたものは、十字穴付きねじとよばれている。ねじを切った部品として、ボルトナットが締付け用として広く使用されている。ボルトの頭部は六角形が普通であるが、四角形、丸形、皿形、円筒形などもある。

 キーは歯車、ベルト車などを回転軸に固定し、動力を伝達させるときに用いられる。その形状により、くらキー、平キー、平行キーなどがある。また、同様の目的として、キー状の突起を軸の外周に等間隔に設け、歯車などのボス部に設けた溝にこの突起をはめ合わせて、動力伝達を行う、スプライン軸という機械要素もある。これは、キーより大きな力を伝える軸に使用される。

 キーは軸の長手方向に沿って埋め込まれるが、軸の長手方向に直角に差し込んで2軸を接合するのがコッターである。あまり大きな力のかからないところに使用されるのがピンである。ねじ部品やキーなどで固定した場合には、必要があれば取り外すことができるが、永久的に締結するものにリベットがある。鉄骨構造物、ボイラーなどに広く使用されている。重ね合わせた金属板に穴をあけ、リベットを差し込み、リベットハンマーでたたいて頭をつくり締結する方法である。

[中山秀太郎・清水伸二]

支持部品

軸、軸受などである。軸には主として曲げ作用を受ける車軸、捩(ねじ)り作用を受ける伝動軸、曲げ、捩り、引っ張り、圧縮などを同時に受ける軸などがある。これらの軸を支える部品を軸受という。軸に対して直角方向の荷重を受けるラジアル軸受と、軸方向に荷重を受けるスラスト軸受とがある。軸受はその構造上から、軸と軸受の面が直接接触してすべり運動をするすべり軸受と、軸受の内輪と外輪の間にころや玉をいれて、軸と軸支持部との摩擦を軽減した、ころがり軸受とに分けることができる。すべり軸受ではグリース、鉱物油などによって、接触面間に薄い油膜をつくって、軸と軸受が直接接触しないようにする。これを潤滑という。ころがり軸受は、球を入れた玉軸受(ボールベアリング)と、ころを入れたころ軸受(ローラーベアリング)とがある。ころがり軸受にもラジアル形とスラスト形とがある。

[中山秀太郎・清水伸二]

動力伝達部品

てこクランク機構、スライダー・クランク機構などに使用されるリンク、自動機械などの複雑な運動を伝えるカム、回転を確実に伝える歯車、一方の軸の動力を他方の軸に伝達する軸継手などがある。リンクを組み合わせたリンク装置は機械に数多く使用されている。歯車には平歯車、傘(かさ)歯車、はすば歯車ウォームなど種類は多い。遊星歯車装置は自動車などに使われ、動力伝達に重要な役割を果たしている。そのほかベルト、ロープ、鎖なども動力の伝達に使われる。軸継手には2軸を常時連結しているものと、連結したり切り離したりするクラッチとがある。スリーブ継手、フランジ継手、たわみ継手、自在継手などは前者で、かみ合いクラッチ、摩擦クラッチ、流体クラッチなどは後者である。

[中山秀太郎]

その他

機械の運動を調節したり停止させたりするブレーキ、運動のエネルギーをためておいて適時エネルギーを放出するフライホイール、流体を送るための管やそれを連結する管(くだ)継手、流体の流れを調節したり止めたりする弁、流体の漏れを防ぐパッキンのほかに、金属の弾性を利用して衝撃などを防ぐためのばねなどがある。ばねには、重ね板ばね、コイルばねなどがある。また空気を密閉した空気ばねもある。

[中山秀太郎]


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改訂新版 世界大百科事典 「機械要素」の意味・わかりやすい解説

機械要素 (きかいようそ)
machine elements

ねじ部品,歯車,軸,軸受などのように多くの機械に使用されている共通の部品。相当複雑にみえる機械でも,それを細かく分解していくと,これらの比較的簡単な機械要素から構成されていることがわかる。一般に機械要素はそれ単独では役に立たないが,機械全体の中に適切に組み込まれることによって,それぞれたいせつな機能を発揮している。機械要素に該当する部品は,てこ,くさび,滑車,車輪,軸のように古代技術の時代から存在していたが,機械要素の概念は,機械工業および機械工学の発達につれてしだいに形成されたものと考えられる。文献上に明確に出現しはじめたのは1850年代からであり,ドイツのF.リューローが機械設計の教科書を発表(1861)したころから普及しはじめ,さらにイギリスのW.C.アンウィンが《The Elements of Machine Design》(1877)を著し,機械要素の解説によって機械設計を教育する方式を採用してから,この方式が機械設計の教科書の標準的スタイルとして世界的に普及した。

 おもな機械要素の分類は次のとおりである。(1)締結用機械要素 リベット,ねじ部品,キー,ピンなど。(2)支持用機械要素 軸受,機械台(ベッド)など。(3)伝動用機械要素 軸,軸継手,クラッチ,歯車,ベルト,鎖(チェーン)など。(4)配管用機械要素 管,管継手,バルブ(弁),コックなど。このほか,ばね,フックなども機械要素である。

 機械要素は各種の機械に共通して用いられる基本的な部品であるから,製作する機械ごとにばらばらに作っていたのでは生産性も悪くコストも上昇し,また互換性も悪くなる。このため現在では,各国とも多くの機械要素について,その寸法,材質などを規格化して種類を限定しており,共通部品としての性質をもたせている。さらに国際規格を制定して,国際的互換性をもたせようとする努力も続けられている。
規格
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「機械要素」の意味・わかりやすい解説

機械要素【きかいようそ】

多くの機械に共通に使用されている単位的な部分。ボルトナットなどのねじ部品や,歯車ベルト滑車(プーリー),軸受ばね,管,管継手などが代表的な機械要素である。→規格

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