橘薗(読み)たちばなのその

改訂新版 世界大百科事典 「橘薗」の意味・わかりやすい解説

橘薗 (たちばなのその)

摂津国川辺郡(現,尼崎市立花,久々知から伊丹市森本,北村付近)の散在薗地。住民は橘,柑子(こうじ)などを摂関家に納め,代りに得た役田を耕作して国役免除の特権を得,しだいに荘園化した。1062年(康平5)関白藤原頼通の春日詣のさい,裹飯(つつみいい)200果を負担している。これが初見で,高陽院領を経て近衛家領となり,近衛基通は浄土寺門跡となった子円基に1227年(安貞1)譲った。以来,浄土寺門跡領として他の侵略をうけながら,一部は応仁の乱後まで存続した。1329年(元徳1)ごろ,大炊助入道女子藤原氏と後家が公文職を抑え,伊丹住人西道が薗内安延名の年貢を抑留している。その後,森本資宗は薗内大路村下司公文職を,同じく親基は橘薗惣公文職を所有している。薗内3ヵ村は1461年(寛正2)久米井の件で隣接の春日社領原田荘と水論している。こうして年代の下るほど,伊丹,森本氏や隣荘の侵略のためしだいに衰亡した。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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