橋頭堡(読み)きょうとうほ(英語表記)bridgehead

翻訳|bridgehead

精選版 日本国語大辞典 「橋頭堡」の意味・読み・例文・類語

きょうとう‐ほ ケウトウ‥【橋頭堡】

〘名〙 (「きょうとうほう」とも)
渡河または上陸作戦で渡河(上陸直後、まず占領して、後続部隊の上陸を援護し、またその後の攻撃のための足場とする陣地。特に、橋のたもとに築いた陣地。〔五国対照兵語字書(1881)〕
② 相手を攻める足がかり。よりどころ。根拠地。
※夜と霧の隅で(1960)〈北杜夫〉九「イタリヤに於ては今や孤独のドイツ軍はモンテ・カッシーノの防衛線を死守していた。しかし敵はその後方のアンツィオ附近に強力な橋頭堡を打ちこんでいた」

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デジタル大辞泉 「橋頭堡」の意味・読み・例文・類語

きょうとう‐ほ〔ケウトウ‐〕【橋頭×堡】

橋のたもとに構築する陣地。
渡河や上陸作戦のとき、上陸地点に確保し、その後の作戦の足場とする拠点
事に着手する足がかり。よりどころ。「進出橋頭堡とする支店
[類語]軍陣陣地陣営陣所陣屋敵陣戦陣トーチカ

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改訂新版 世界大百科事典 「橋頭堡」の意味・わかりやすい解説

橋頭堡 (きょうとうほ)
bridgehead

渡河作戦における戦術用語であるが,一般に地歩を確保する意味で広く用いられる。元来,初期の渡河部隊が後続部隊の作戦を容易にするために対岸に占領確保する地域をいう。通常,次の3段階に区分する。(1)敵の小銃,機関銃などの直接に目標を照準して射撃する火器から効果的な射撃をうけなくなるような距離にある要点を連ねる線。第一線がそこまで進出すれば,門橋(渡河作戦用の舟艇を組み合わせて重材料,戦車などを対岸に渡すようにしたもの)などの組立てが始められる(通常数kmの縦深)。(2)敵の砲兵の地上観測射撃をうけなくなる線。車両用の架橋が可能になる(通常十数kmの縦深)。(3)たとえ敵砲兵の射撃をうけても正確かつ連続した射撃でなく,友軍の作戦行動が阻害されないような線。補給品,兵站(へいたん)諸施設が収容可能になり,渡河作戦が終了し〈橋頭堡が完成された〉という(通常20~30kmの縦深)。類似語としては空挺堡airhead,海岸堡beachheadがある。空挺作戦と上陸作戦の場合の用語で,先遣された部隊が後続主力のために,事後の作戦に移行するための飛行場や揚陸海岸を確保することは同じである。ただ形態的に前者は降着場または飛行場を中心とする円形陣地,後者は海岸線にそった縦深15~20kmの半月形の場合が多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「橋頭堡」の意味・わかりやすい解説

橋頭堡
きょうとうほ
bridge head

渡河攻撃の際、渡河部隊がその後の作戦に必要な地歩を確立するため、対岸に確保する地域をいう。もとは川を挟んで戦うとき、橋のたもとに堅固に築いた陣地のことであった。上陸作戦の際、上陸部隊が海岸に確保する地域のことは海岸堡beach headとよぶ。空挺作戦のときは空挺堡air headという。これらをあわせて、敵の戦線の一角を占領確保し、その後の前進拠点とする地域をさすこともあるが、作戦用語としては区別されている。橋頭堡は、敵砲兵の持続射撃を排除し、補給などがスムーズに実施できるだけの地域を確保して完成する。

[藤井治夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「橋頭堡」の意味・わかりやすい解説

橋頭堡
きょうとうほ
bridgehead

本来は戦術上の常則として,河川をはさんでの攻防に際して橋または対岸の渡河点に造られる強固な陣地をいう。現在では,上陸作戦などで後続部隊前進の際の援護を行うため,さらには作戦遂行上の足場を確保するために,敵戦線の一角に設ける拠点をいう。上陸作戦の際,海岸に築かれるものを海岸堡 beachheadという。

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