横山隆一(読み)ヨコヤマリュウイチ

デジタル大辞泉 「横山隆一」の意味・読み・例文・類語

よこやま‐りゅういち【横山隆一】

[1909~2001]漫画家高知の生まれ。横山泰三の兄。昭和初期から漫画の地位向上に努めた牽引役の一人。かわいらしい絵柄とほのぼのとしたタッチ人気を集め、「フクちゃん」は戦前戦後にわたり新聞連載され、六大学野球早慶戦では、早稲田大学マスコットとしても親しまれた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「横山隆一」の意味・わかりやすい解説

横山隆一
よこやまりゅういち
(1909―2001)

漫画家。高知市生まれ。城東中学校卒業。東京美術学校の受験に二度失敗後、郷里の先輩にあたる彫刻家本山白雲(もとやまはくうん)(1871―1952)の内弟子になる。その間『マンガマン』誌などに漫画を投稿していると、白雲に漫画家となることを勧められ堤寒三(つつみかんぞう)(1895―1972)の門に入る。やがて岡本一平(いっぺい)門下近藤日出造(ひでぞう)(1908―1979)、杉浦幸雄(ゆきお)(1911―2004)らとも知り合うようになり、1932年(昭和7)近藤、杉浦らと「新漫画派集団」を結成。同集団はナンセンス漫画をマスコミ各紙誌に売り込むことで漫画界の主流になっていく。1936年1月、『朝日新聞』に『江戸ッ子健ちゃん』を連載。脇役(わきやく)のフクちゃんの人気が高かったため、同年10月より『養子のフクちゃん』としてスタート、フクちゃんブームがおこり、中村メイコ(1934―2023)主演で映画化されるほどであった。この作品は、かけ出し時代の長谷川町子に大きな影響を与えた。第二次世界大戦後は『デンスケ』(毎日新聞)、『百馬鹿(ひゃくばか)』(漫画サンデー)などの作品を生み、『フクちゃん』も『毎日新聞』に1956年(昭和31)から1971年まで連載された。1955年ごろから「おとぎプロ」を設立してアニメーション映画も製作した。また、戯画油彩画の個展を何回も開催している。1994年(平成6)文化功労者。

 実弟の横山泰三(たいぞう)(1917―2007)も『プーサン』(毎日新聞・週刊新潮)や、1954年より『朝日新聞』に連載の『社会戯評』で知られ、戦後漫画の改革者の一人である。

[清水 勲]

『横山隆一著『隆一コーナー』(1982・六興出版)』『『隆一画集』(1987・かまくら春秋社)』『横山隆一著『横山隆一・わが遊戯的人生』(1997・日本図書センター)』『横山隆一著『百馬鹿』(小学館文庫)』『横山泰三著『プーサン』(小学館文庫)』

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改訂新版 世界大百科事典 「横山隆一」の意味・わかりやすい解説

横山隆一 (よこやまりゅういち)
生没年:1909-2001(明治42-平成13)

漫画家。高知県生れ。1928年,川端画学校に学び,このころから《アサヒグラフ》《新青年》などに漫画を描き出し,32年に近藤日出造,杉浦幸雄らと新しい感覚によるナンセンス・マンガをめざして〈新漫画派集団〉(第2次大戦後の〈漫画集団〉の前身)を結成。36年《朝日新聞》に《江戸っ子健ちゃん》を連載,その作中の副主人公である養子のフクちゃんが人気を得て,以後《フクちゃん》ものとしてひきつがれる。これは戦後の56年に《毎日新聞》に移り,71年終了まで5534回を重ね,日本漫画史上最初のロングランとなった。また,55年から《おんぶおばけ》などのアニメーション作品を製作。それに伴い56年には〈おとぎプロ〉を設立した。新聞連載としては他に《デンスケ》(1949-55,《毎日新聞》),漫画集には《勇気》(1966)などがある。漫画界屈指のアイデアマンとして,小市民の生活から生まれる笑いを創造した。
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百科事典マイペディア 「横山隆一」の意味・わかりやすい解説

横山隆一【よこやまりゅういち】

漫画家。高知県生れ。横山泰三の兄。岡本一平に師事して漫画を学び,また欧米の漫画形式を吸収して日本の漫画界に新風を吹きこんだ。1932年新漫画派集団(第2次大戦後漫画集団と改称)を設立。1936年《朝日新聞》に《江戸ッ子健ちゃん》を連載,その中の登場人物〈フクちゃん〉が独立,圧倒的人気を博した。ほかに《毎日新聞》の《デンスケ》等がある。《おんぶおばけ》(1955年)などのアニメーション映画も製作。
→関連項目近藤日出造漫画

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「横山隆一」の意味・わかりやすい解説

横山隆一
よこやまりゅういち

[生]1909.5.17. 高知
[没]2001.11.8. 神奈川
漫画家。生糸商の長男として生れる。漫画家横山泰三の兄。中学校卒業後漫画をかき,1928年彫刻家,素山白雲の門下となる。 32年,近藤日出造,小山内龍らと「新漫画派集団」を結成。 36年,『朝日新聞』に連載した『江戸ッ子健ちゃん』は,その副主人公のほうが人気が出て,第2次世界大戦後『フクちゃん』として『毎日新聞』に 56~71年まで連載,日本漫画史上最長連載を記録した。 55年に「おとぎプロ」を設立,『おんぶおばけ』などのアニメーション,79年には漫画集『百馬鹿』を制作した。 94年文化功労者に選ばれる。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「横山隆一」の解説

横山隆一 よこやま-りゅういち

1909-2001 昭和-平成時代の漫画家。
明治42年5月17日生まれ。横山泰三の兄。昭和7年近藤日出造,杉浦幸雄らと新漫画派集団(現漫画集団)を結成。11年から「朝日新聞」に連載の「江戸ッ子健ちゃん」は「フクちゃん」とあらためられ,戦後は「毎日新聞」にひきつがれて46年までつづいた。アニメーション映画も製作。平成6年文化功労者。平成13年11月8日死去。92歳。高知県出身。高知城東中学卒。作品はほかに「デンスケ」「百馬鹿」など。

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