楽府詩集(読み)がふししゅう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「楽府詩集」の意味・わかりやすい解説

楽府詩集
がふししゅう

中国、北宋(ほくそう)の郭茂倩(かくもせん)が、先秦(しん)・漢から唐・五代までの楽府作品を集めた書物。100巻。北宋末に成立したと推定される。約5300首を、郊廟(こうびょう)歌辞、燕射(えんしゃ)歌辞、鼓吹(こすい)曲辞、横吹(おうすい)曲辞、相和(そうわ)歌辞、清商(せいしょう)曲辞、舞曲歌辞、琴曲歌辞、雑曲歌辞、近代曲辞、雑歌謡辞、新楽府(しんがふ)辞の12類に分けて収める。本来は楽器の伴奏とともに歌われた楽府は、唐代に入ると、音楽から離れた題を借りただけの擬作が多くつくられ、また新しい歌曲も生まれた。本書はそれらを網羅的に集め、それぞれの楽府題に解説を付す。唐以前の伝統的な楽府作品、および楽府関係の資料は、本書によって伝えられているものが少なくない。宋刊本があり、影印されて流布する。

[佐藤 保]

『中津濱渉著『楽府詩集の研究』(1970・汲古書院)』『増田清秀著「郭茂倩の楽府詩集編纂」(『楽府の歴史的研究』所収・1970・創文社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「楽府詩集」の意味・わかりやすい解説

楽府詩集 (がふししゅう)
Yuè fǔ shī jí

中国,北宋の郭茂倩(かくもせん)(神宗時代の人)が著作し,最も評価の高い楽府の総集。100巻。独創的な見解から,古代より唐・五代までの楽府5290首を,12の部門に分類しかつ配列し,部門ごとに解題している。その内訳は,郊廟歌辞803首・燕射歌辞166首・鼓吹曲辞256首・横吹曲辞303首・相和歌辞831首・清商曲辞733首・舞曲歌辞180首・琴曲歌辞172首・雑曲歌辞767首・近代曲辞331首・雑歌謡辞319首・新楽府辞429首である。
新楽府
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「楽府詩集」の意味・わかりやすい解説

楽府詩集
がふししゅう
Yue-fu shi-ji

中国,北宋に編纂された楽府集。郭茂倩 (かくもせん) の編。 100巻。上古から唐,五代までの楽府,歌謡 5290首を集めたもの。楽府の性格によって,郊廟歌辞,燕射歌辞,鼓吹曲辞,横吹曲辞,相和歌辞,清商曲辞,舞曲歌辞,琴曲歌辞,雑曲歌辞,近代曲辞,雑謡歌辞,新楽府辞の 12部門に分類し,各部門では時代順に作品を並べ,その曲調 (楽府題) ごとに解題をつけてある。この分類はこれ以後の楽府研究典拠となった。約 160種の文献を引用した詳細適切な解題と相まって,最も系統的,網羅的な楽府の総集として価値の高いものである。

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世界大百科事典(旧版)内の楽府詩集の言及

【歌謡】より

…この音楽官署の設置以来,楽府において集められるべき民間歌曲作品を一律に〈楽府〉と称するようになり,やがては歌謡作品をすべて〈楽府〉とよぶ習慣が生まれた。中国古代の《詩経》以外の歌謡を集大成したものとしては,宋の郭茂倩(かくもせん)の《楽府詩集》100巻が有名であるが,そこには漢代から唐代に至るまでの民謡のおおむねが集録されている。《楽府詩集》には,民間歌謡にあやかって詩として作られた文人の作品や,新しく題を設定して詩として作られた新題楽府(新楽府)の作品も集大成されているが,《楽府詩集》において〈古辞〉として掲げられているものは,すべて実際に歌謡として歌われたものばかりである。…

※「楽府詩集」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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