極東共和国(読み)きょくとうきょうわこく(英語表記)Dal'nevostochnaya Respublika

改訂新版 世界大百科事典 「極東共和国」の意味・わかりやすい解説

極東共和国 (きょくとうきょうわこく)
Dal'nevostochnaya Respublika

ロシア革命干渉戦争の時期に,日本干渉軍との直接対決を避けるため,ロシア共産党中央の決定により,バイカル湖以東の地域につくられた緩衝国。1920年4月から22年11月まで存在した。はじめベルフネウジンスク(現,ウラン・ウデ)に形成され,その周辺だけが領域であったが,セミョーノフの率いる反革命政権の崩壊後,首都をチタに移し,バイカル湖から太平洋岸までの全域がその領域となった。錨とつるはしを国章とし,国民議会を最高機関とする議会制共和国で,無党派農民をも結集しながら,主導権は共産党が握っていた。首班クラスノシチョーコフA.M.Krasnoshchyokov(1880-1937)。日本軍の撤退を要求して,大連会議および長春会議で日本政府と交渉する一方,ブリュッヘルの指導下に人民革命軍を編成して,パルチザン部隊を正規軍化し,その力で白衛軍を打破し,住民諸勢力の結集によって日本軍を撤退に追い込んだ。日本軍撤退後,ソビエト・ロシアに合併した。
シベリア出兵
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「極東共和国」の意味・わかりやすい解説

極東共和国
きょくとうきょうわこく
Дальневосточная Республика/Dal'nevostochnaya Respublika ロシア語
Far Eastern Republic 英語

1920~22年、旧帝政ロシア領のほぼバイカル湖以東に、日本軍とロシア・ソビエト社会主義共和国間の緩衝国として建設された民主主義共和国。首都はベルフネウジンスク(現ウラン・ウデ)、のちにチタ。東進を続けた赤軍は、20年初めイルクーツクに到達したが、共産党はバイカル湖以東の一部地域を占領する日本軍との衝突を避けるため、赤軍の前進を止め、また極東地域でのソビエト政権の樹立をも避ける方針をとった。このため20年4月6日、解放されたベルフネウジンスクで極東共和国の成立が宣言され、独自に人民革命軍が組織された。その後、セミョーノフ軍をチタから掃討すると、極東地域に成立していた諸政府の代表者会議をチタで開催、憲法制定会議の選挙を行った。その結果、共産党とそのシンパが4分の3を占め、共産党の指導の下にソビエト政府と密接な関係を保ちつつ、日本軍の撤兵を国際世論に訴えた。また、日本とも大連(だいれん)会議(1921)、長春会議(1922)を開いている。人民革命軍は22年10月25日、日本軍の撤兵直後にウラジオストクに入り、11月14日、極東共和国はロシア・ソビエト社会主義共和国への合流を決定した。

[藤本和貴夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「極東共和国」の意味・わかりやすい解説

極東共和国
きょくとうきょうわこく
Dal'nevostochnaya Respublika; DVR

日本によるシベリア占領を武力によらず政治的に解消することを主要な目標として 1920年ソ連共産党中央委員会がザバイカリエ・アムール州,沿海州,カムチャツカ州およびサハリン州を領域に設立した緩衝国家。首都はチタ。独自の憲法を制定したが主導権はボルシェビキ握り,モスクワ政府の国家承認と財政援助を受けた。主として日本との政治折衝,対白衛軍・日本軍との戦闘が繰返されたのち,22年日本が沿海州から撤兵すると,共和国はその存在理由を失い,その国民議会はソビエト極東革命委員会にその機能を移譲,共和国は終焉した。

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世界大百科事典(旧版)内の極東共和国の言及

【カラハン宣言】より

…ついで北京政府が派遣した張斯(ちようしりん)を団長とする軍事外交使節団にカラハンが手交したのが9月27日付の第2回宣言である。その内容は第1回宣言の条文化であったが,東支鉄道の使用に関しては中ソのほかに極東共和国も運営に参加するとして,無償返還でなくなった点が異なっていた。なお24年5月,中国に派遣されたカラハンは北京政府との間に正式国交を樹立するが,その協定の中でこの鉄道は中国側が買い戻すことを認めている。…

※「極東共和国」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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