楊枝・楊子(読み)ようじ

精選版 日本国語大辞典 「楊枝・楊子」の意味・読み・例文・類語

よう‐じ ヤウ‥【楊枝・楊子】

〘名〙
① 楊(やなぎ)の枝。呪物(じゅぶつ)として、病気を治したり、人に害を与えたりするためのまじないに用いた。
※霊異記(810‐824)上「毎に病者に咒して奇異有り、楊枝を取りに枝に上る時、錫杖を錫杖に立つ」
② 歯の垢を取り除き、清潔にするための道具。もとは仏家の具で、比丘の十八物の一つに数える。インドで小枝の先をかんで細かいすじのようにして使用したところからおこり、その後は主として楊柳の材の先端をたたいて総(ふさ)のようにしたものをいう。ふさ楊枝。
※延喜式(927)一三「正月最勝王経斎会堂装束〈略〉其御薬八日始充之楊枝置絵案二脚」 〔隋書‐南蛮伝・真臘
③ 歯の間にはさまったものを取り去ったり、食物を刺したりするのに用いる、先端をけずってとがらせた細く短い木の棒。つま楊枝。小楊枝。
※梵舜本沙石集(1283)三「食後の菓子まで、至極せめくひて、楊枝つかふに」
[語誌](1)楊柳の枝に呪術的な意味があり、病を治し、歯痛を止める効果があるとされたために、楊枝が作られたと考えられる。仏教とともに伝えられ、貴族の毎日用いるところとなった。
(2)柳の他、杉、竹なども用いられたが、江戸時代には特に黒文字を皮を付けたまま楊枝としたものが貴ばれた。大きさも三寸から六寸以上のものもあり様々であったが、中世後期には③のように小さなものが作られ、②のふさ楊枝などの大きなものに対して、爪楊枝と呼ばれることとなった。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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