検眼(読み)けんがん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「検眼」の意味・わかりやすい解説

検眼
けんがん

眼鏡(がんきょう)処方に必要な検査をいう。目の検査法には種々あるが、目に異常を感じて眼科を受診した場合、まず受けるのが視力検査で、これには視力障害の種類や年齢に応じていろいろな検査法がある。

 裸眼視力の測定には、国際視標であるランドルト環(7.5ミリメートル方形中に太さ1.5ミリメートルの環を描き、1.5ミリメートルの切れ目をつけたもの)や各種の字体を5メートルの距離で片眼ずつ検査する。他眼は遮閉子で隠すが、このとき強く圧迫したり目をつぶったりしないように注意する。裸眼視力が悪くて矯正視力を測定する場合には、検眼枠をかけて度の弱いほうから、遠視であればプラス(+)、近視であればマイナス(-)の球面レンズを入れてゆく。度をすこしずつ強めてゆき、もっとも見やすくなったところがその人の遠視、もしくは近視の度になる。この時点で乱視表を見て、均一に見えない場合は乱視が存在しているので、円柱レンズを追加する。円柱レンズを各方向に回転して見るほか、種々円柱レンズの度を変えて見て、乱視の軸と度を決める。

 このような方法で自覚的な検眼を行うほか、他覚的検査も行う。それには検影法とレフラクトメーター(屈折計)による検査がある。検影法とは、種々の度の球面レンズのついた板付きレンズと線状検影器を用いて屈折異常の種類と程度を調べる。レフラクトメーターにはさまざまな種類があるが、最近ではコンピュータを用いて自動的に屈折異常の程度や乱視の軸などを調べるオートレフラクトメーターが用いられている。短時間に多くの検眼が必要な健康診断などでは非常に有用である。このように、検影法やレフラクトメーターを用いて他覚的に検査を行ってから、検眼レンズで自覚的に矯正視力を測る。なお、矯正視力が悪い場合は、ほかに視力障害をおこす原因が考えられるので、眼科的な諸検査を受けることになる。

 子供の視力測定の場合、大人と同じように一枚の視力表に多くの視標が並んでいるものでは、読み分けるのに困難なことが多いので、視標が一つずつになっている「字ひとつ視力表」で検査を行う。これは3歳以上の子供に実施できるが、それ以下の場合は他覚的検査が必要である。そのほか、子供の斜視、弱視、眼球震盪(しんとう)のある場合、両眼開放視力検査を行うこともある。とくに小児などで調節が非常に働く場合、この調節を除去する目的でアトロピンなどの散瞳(さんどう)剤を用いて他覚的、自覚的検査を行うこともある。

 なお、視力の表し方にはいくつかあるが、日本では、視力のもっともよいものを2.0、ついで1.5、1.2、1.0、0.9以下、0.1までとなってゆくが、視力表のいちばん上の0.1の視標が読めないときには、1メートルずつ前へ進んで0.1の指標を見てもらい、0.08~0.01まで分ける。0.01以下は指数弁(眼前で指の数を見分ける)、手動弁(眼前で手の動きを見分ける)、そして光覚の有無で表現する。

 以上述べたように、視力測定いわゆる検眼は屈折異常の種類を発見するのみならず、正しく検眼したにもかかわらず矯正視力の低下している場合はなんらかの疾患があることを意味するわけで、非常にたいせつな検査法である。したがって、眼鏡(めがね)をつくる場合も同様で、正確に測定するためには、慣れた人が行う必要がある。これには眼科医、視能訓練士(ORT)、眼科検査助手(OMA)などが行い、慣れた看護師が測定する場合もある。不正確な眼鏡を装用すると眼精疲労にもなるし、信頼のおける検眼は眼科医にとってたいせつな診断の第一歩である。

[中島 章]

『糸井素一・所敬ほか編『眼鏡』改訂版(2001・メディカル葵出版)』


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百科事典マイペディア 「検眼」の意味・わかりやすい解説

検眼【けんがん】

近視遠視などの目の屈折異常に対し,眼鏡やコンタクトレンズの処方に必要な諸検査を行うこと,あるいは眼底を検査することで,一般には前者をいう。屈折度や調節力の検査,瞳孔(どうこう)間距離測定などがあるが,中心は屈折度の検査で,単に眼鏡の度を合わせることを検眼と呼ぶこともある。屈折度検査には,暗室内で屈折計などの器具を用いて行う方法と,明室で種々のレンズを装着させ,視力表や乱視表などを見せて,最良の視力を得るレンズを選ぶ方法とがある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「検眼」の意味・わかりやすい解説

検眼
けんがん
ophthalmoscopy

通常,補正用のめがねを選定するために行う眼の検査をいう。視力表と検眼用レンズセットを用いる自覚的方法のほかに,検影法あるいは屈折計を用いて行う他覚的屈折検査法がある。近年では,自動屈折計やビジョンアナライザなども使われている。また,検眼鏡を用いた眼底検査を検眼ということもある。

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精選版 日本国語大辞典 「検眼」の意味・読み・例文・類語

けん‐がん【検眼】

〘名〙 視力を検査すること。近視眼、遠視眼などの程度を検査すること。
恍惚の人(1972)〈有吉佐和子〉一三「デパートにも眼鏡の売場がある。そこなら検眼するにもきっと専門家がいるだろう」

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デジタル大辞泉 「検眼」の意味・読み・例文・類語

けん‐がん【検眼】

[名](スル)視力を検査すること。

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世界大百科事典 第2版 「検眼」の意味・わかりやすい解説

けんがん【検眼 optometry】

本来は,眼が見えにくくなったときに,その原因をさぐるためにおこなわれる眼の検査一般を指す言葉であるが,現在では,(1)視力検査と眼鏡矯正のための検査,(2)眼底検査に用いる検眼鏡検査,の二つの意味に狭義に使われ,一般では(1)を指すことが多い。
[視力検査と眼鏡矯正]
 視力を測定し,近視,遠視,乱視など屈折異常の有無を調べ,屈折異常や老視(老眼)のある場合は,最適の眼鏡の度数を決定するまでの検査。屈折異常の検査には,他覚的検査と自覚的検査の二つの方法がある。

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世界大百科事典内の検眼の言及

【アトロピン】より

…(2)腺分泌抑制薬として,胃液分泌抑制,制汗,唾液や気管支分泌の抑制,さらにモルヒネと併用して全身麻酔の際におこる過剰分泌の抑制に用いる。(3)瞳孔散大薬として1%溶液を検眼の際に用いる。(4)パーキンソン症候群の振戦や固縮にも使用される。…

※「検眼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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