検封(読み)ケンプウ

デジタル大辞泉 「検封」の意味・読み・例文・類語

けん‐ぷう【検封】

[名](スル)
検査をして封印すること。また、封印を検査すること。
中世、犯罪人などの財産を差し押さえ、住居を封鎖すること。

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改訂新版 世界大百科事典 「検封」の意味・わかりやすい解説

検封 (けんぷう)

検査して封印すること,あるいは物品を検査して差し押えること。撿封,検符とも書く。《類従三代格》の870年(貞観12)の太政官符に,大宰府庫保管の甲冑等の武具の損失にさいし,府庫が撿封されているために容易に調査することができない不便さが取り上げられている。また1187年(文治3)に〈官庫納米の習いは,納所使書生をもって撿納せしめ,また撿封せしむること諸国一同の流例なり〉(《吾妻鏡》)とされ,官公庫収納物品が検査のうえ封印されている。これにたいして932年(承平2),丹波国大山荘の田堵(たと)百姓が,調絹(ちようけん)を滞納したために200束の稲を検封され,進納ののちに検封を解かれている。1078年(承暦2),東寺権律師義範が大和国小泉荘に多数の使者を遣わして農民の納入すべき物品を検封し,住人を責淩したことを非難されている。

 1116年(永久4),東大寺領山城国泉木津の梶取為清などが政所上洛の梶取役勤仕が遅れたために住宅を検封されているのは,年貢夫役の滞納には物品の差押えのみならず,住宅もその対象になっていることを示す。住人としての義務を果たさない場合や罪を犯した場合,住宅に注連縄(しめなわ)を張られ検封された。年貢の滞納の場合も,1339年(延元4・暦応2)の規定に〈毛ヲ点定之時ハミ(シ)メヲ立,地ヲ点定之時ハ札ヲ立之条,往古之規式也〉とあって,作物の差押えには注連縄が張られ,土地の差押えには点札が立てられている。これは神木,神札,注連縄をほどこすことにより聖地として俗的な所有権を排除したのである。俗人領主の場合には宗教的な権威をかりた検封形態をとらず,武力を背景に検封をおこなった。1343年(興国4・康永2)に作成された〈京都祇園社領内犯科人跡社家勘例注進〉によると,1310年(延慶3),六条坊門堀川住人右馬允は殺害の罪により,身柄幕府に捕らえられ,住宅は祇園社によって検封されている。不浄,盗犯,喧嘩,刃傷,殺害,博奕などの罪で検封された場合,罪が重大であれば,住宅破却,住宅壊取(こぼちとり)(解体して没収),住宅焼却の処分にされた。領主権力が衰退し,住人の結合が強化されるようになると,領主による検封が住人によって解除されるという事態も出現する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「検封」の意味・わかりやすい解説

検封
けんぷう

検査し、封をすること。平安時代から室町時代にかけて、私財の差押え行為として見受けられる。犯罪が明らかになると、検非違使(けびいし)などの検断権の執行者は犯罪人の私宅、倉庫を差し押さえた。また荘園(しょうえん)や国衙(こくが)領の農民が年貢、公事(くじ)、課役を未進し、納入催促に従わないでいると、私宅、倉庫、私財の差押えが行われた。家屋、倉庫を封鎖するのが普通であるが、田畠に神木を立てて稲、麦の差押えが行われることもあった。

[山本隆志]

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