椎葉(村)(読み)しいば

日本大百科全書(ニッポニカ) 「椎葉(村)」の意味・わかりやすい解説

椎葉(村)
しいば

宮崎県北西部、東臼杵郡(ひがしうすきぐん)にある村。村名はこの地域が古くから椎葉山(しいばやま)とよばれたことによる。九州山地の中心部にあたり、国見岳(くにみだけ)(1739メートル)や市房山(いちふさやま)(1721メートル)などがそびえる。また、耳川(みみがわ)、一ツ瀬(ひとつせ)川もここに発する。椎葉の九州山地は壮年期山地で、河谷は急斜面の峡谷のため集落は山腹緩斜面点在、分布する。国道265号、327号、388号が通る。村の起源は中世の隠田(おんでん)集落といわれ、平家の落人伝説(おちゅうどでんせつ)が伝わり、源氏の那須大八郎(なすのだいはちろう)と平氏の鶴富(つるとみ)姫との哀話が残る。江戸時代は幕領であったが、人吉藩(ひとよしはん)がこれを預かった。山村のため水田はほとんどなく、林業畑作が中心で肉用牛の生産も行われている。かつて村内に広く分布した焼畑は今日ほとんど姿を消した。耳川には上椎葉(かみしいば)、岩屋戸(いわやと)の2発電所があり、各9万、5万キロワットの出力がある。前者はアーチ式ダムで、人造湖日向(ひゅうが)椎葉湖がある。上椎葉には伝統的民家鶴富屋敷ともよばれる那須家住宅(国指定重要文化財)があり、隣接して日本初の民俗芸能を専門的に取り上げた椎葉民俗芸能博物館がある。また、十根川(とねがわ)地区は1998年(平成10)に重要伝統的建造物群保存地区に選定された。民謡「ひえつき節」の里としても知られ、椎葉神楽(かぐら)は国指定重要無形民俗文化財である。面積537.29平方キロメートル、人口2503(2020)。

[横山淳一]

『石川恒太郎編『椎葉村史』(1960・椎葉村)』


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