梅蘭芳(メイランファン)(読み)めいらんふぁん

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

梅蘭芳(メイランファン)
めいらんふぁん
(1894―1961)

京劇俳優。女方。北京(ペキン)生まれ。祖父梅巧玲(ばいこうれい)、父梅竹芬(ばいちくふん)、息子梅葆玖(ばいほうきゅう)も女方。娘梅葆玥(ばいほうぼう)、孫范梅強(はんばいきょう)も京劇俳優。梨園(りえん)の名門に生まれ幼少から舞台に立ち、天賦の美声美貌(びぼう)と不断修練名声は海外でも高かった。1930年アメリカ公演、35年モスクワ公演、日本へは1919年(大正8)以後数度来演。これらの公演でスタニスラフスキー、チャップリンらとの交流があった。抗日戦中はひげを伸ばし上演拒否、46年舞台に戻った。彼は従来の青衣(せいい)(貞女の役)と花旦(かたん)(はでな女性の役)の区別を取り払い、戯曲の主題を明確にし役柄形象をつくるため改編改良を加え、優美な舞踊動作を創案した。また観客や時代の要望にも配慮し、純愛、愛国心、女性の尊厳や戦(いくさ)の悲劇にひしげる女性たちを幅広く、絢爛(けんらん)、優美、毅然(きぜん)、典雅に表現した。おもな上演劇目は『黛玉葬花(たいぎょくそうか)』『覇王別姫(はおうべっき)』『宇宙鋒(うちゅうほう)』『貴妃酔酒(きひすいしゅ)』など。59年共産党に入党、中国京劇院院長などを歴任した。著作には『舞台生活四十年』などがある。61年8月8日没。北京西郊の万花山に葬られている。

[中野淳子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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