梅宮大社(読み)うめのみやたいしゃ

精選版 日本国語大辞典 「梅宮大社」の意味・読み・例文・類語

うめのみや‐たいしゃ【梅宮大社】

京都市右京区梅津フケノ川町にある神社。旧官幣中社。祭神は酒解神(さかとけのかみ)、大若子神(おおわくごのかみ)、小若子神(こわくごのかみ)、酒解子神(さかとけのこかみ)ほか四柱。奈良初期、橘三千代橘諸兄の母)が山城国相楽郡井寺(京都府綴喜郡井手町)に一族の氏神としてまつったのに始まる。平安遷都後、現在地に移転。子宝の神として知られる。延喜式名神大社。二十二社の一つ。梅宮神社。うめみや。

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デジタル大辞泉 「梅宮大社」の意味・読み・例文・類語

うめのみや‐たいしゃ【梅宮大社】

京都市右京区にある神社。旧官幣中社。酒解神さかとけのかみ大若子神おおわくごのかみ小若子神こわくごのかみ酒解子神さかとけのこのかみほか四神を祭る。酒造りの神として信仰される。4月3日梅宮祭は有名。梅宮神社。

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日本歴史地名大系 「梅宮大社」の解説

梅宮大社
うめのみやたいしや

[現在地名]右京区梅津フケノ川町

かつら川の東岸に鎮座。「延喜式」神名帳の「葛野郡廿座」のうちに「梅宮坐神ムメノミヤニマス 四社並名神大、月次新嘗」とある。酒解さかとけ神・酒解子さかとけのみこ神・大若子おおわくご神・小若子こわくご神の四座を本殿に、橘諸兄の孫橘清友、その子嘉智子(嵯峨天皇皇后)嵯峨天皇・その子仁明天皇の四柱を相殿に祀る。旧官幣中社。

〈京都・山城寺院神社大事典〉

〔創建〕

伊呂波字類抄」は、檀林皇后(嘉智子)が橘氏の氏神を、円提えんてい寺すなわち諸兄が相楽郡井寺いでら(現京都府井手町)に創建した井手いで寺に祀ったことに起源すると記すが、さらに「此神始犬養大夫人所祭神也、大夫人子藤原太后及牟漏女王於洛隅内頭、其後遷祭於相楽郡提山」とも付す。これによると檀林皇后橘嘉智子の祀った神は、もと諸兄の母でのち藤原不比等夫人となった県犬養宿禰三千代が祀り、次いでその子光明皇后(諸兄とは異父妹)および牟漏女王が「洛隅内頭」に祀り、その後「相楽郡提山」に遷祭したという。「伊呂波字類抄」は続けて、この神が託宣して、天子の「外家神」でありながら大幣にあずからなかったことを怒ったため、嘉智子が井手から葛野川頭、すなわち桂川のほとりの現在地に移したと記す。「梅宮社記」は大若子神・小若子神を伊勢度会神主遠祖といい、伊勢国度会わたらい郡より移したとするが詳細は不明。また社記は嘉智子には子がなく、梅宮に祈って生れたのがのちの仁明天皇だという。今、本殿の東側に二個の丸い「またげ石」とよぶ小石があり、不妊の婦人がまたぐと懐胎するといわれる。

承和三年(八三六)一一月七日、当社の酒解神に従五位上、同じく大若子神・小若子神に従五位下、同一〇年五月二三日酒解子神に従四位下が授けられ(続日本後紀)、天安三年(八五九)一月二七日、前記四神に正四位上(「三代実録」貞観元年同日条)、貞観一七年(八七五)五月一四日には従三位(同書)、延喜一一年(九一一)二月二日、梅宮神に正三位が授けられている(日本紀略)

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改訂新版 世界大百科事典 「梅宮大社」の意味・わかりやすい解説

梅宮大社 (うめのみやたいしゃ)

京都市右京区に鎮座。酒解(さかとけ)神,大若子(おおわくご)神,小若子神,酒解子神を主神とし,嵯峨天皇,仁明天皇,檀林皇后,贈太政大臣橘清友公を配祀する。橘諸兄(もろえ)の母,橘三千代が,山城国相楽郡井出庄(現,綴喜郡井手町)の井出寺に橘氏の氏神としてまつったのが創祀。のちたびたびその鎮座地を移したが,仁明天皇のとき託宣により,天皇の母檀林皇后(橘嘉智子)により現在地に移され,皇后みずからまつったのが梅宮祭の起源。その梅宮祭は4月,11月の上酉日に行われ,橘氏の五位1名が勅使として奉幣のため派遣されたが,橘氏が衰えるとともに藤原氏が代わった。875年(貞観17)従三位に叙され,延喜の制で名神大社,のち二十二社の制の一社に加えられた。中世荒廃したが,江戸幕府は朱印領59石余を寄せ,明治の制で官幣中社。酒の神として信仰される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「梅宮大社」の意味・わかりやすい解説

梅宮大社
うめのみやたいしゃ

京都市右京区梅津(うめづ)フケノ川町に鎮座。祭神は、酒解神(さかとけのかみ)、大若子神(おおわくごのかみ)、小若子神(こわくごのかみ)、酒解子神(さかとけのみこがみ)の4座を主祭神に、嵯峨(さが)天皇、仁明(にんみょう)天皇、檀林(だんりん)皇后(嵯峨天皇皇后、橘嘉智子(たちばなのかちこ))、橘清友(きよとも)(檀林皇后の父)をあわせ祀(まつ)っている。初め県犬養三千代(あがたいぬかいのみちよ)(藤原不比等(ふひと)の妻、光明(こうみょう)皇后の母)が奉斎していたのを、のちに山城(やましろ)国(京都府)相楽(そうらく)郡に移し、仁明天皇(在位833~850)の御代に檀林皇后が橘氏の氏神として現社地に社殿を造営したと伝えられる。『延喜式(えんぎしき)』で名神(みょうじん)大社に列し、平安中期以降の二十二社奉幣社の一つにも加えられた。酒造家の信仰が厚く、また安産の神としても尊崇されている。旧官幣中社。例大祭は4月第3日曜日の桜祭。

[白山芳太郎]

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百科事典マイペディア 「梅宮大社」の意味・わかりやすい解説

梅宮大社【うめのみやたいしゃ】

京都市右京区梅津フケノ川町に鎮座。旧官幣中社。酒解(さかとけ)神,大若子(おおわくご)神,小若子神,酒解子(みこ)神をまつる。橘氏の氏神としてまつられたのが起源。延喜式内の名神大社とされ,二十二社の一つ。例祭は4月3日。安産・酒造の神として信仰される。境内のカキツバタは有名。

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世界大百科事典(旧版)内の梅宮大社の言及

【清酒】より

麴(こうじ)
[来歴]
 《播磨国風土記》にはカビの生えた乾飯(かれいい)で酒をかもしたという伝承が記載されており,日本では8世紀初頭すでに酒造にこうじが用いられていたことをうかがわせる。古来,酒造の神として信仰を集めてきたのは奈良県桜井市の大神(おおみわ)神社,京都市の梅宮(うめのみや)大社,松尾(まつのお)大社の3社であった。このうち松尾大社は朝鮮からの渡来氏族秦(はた)氏の氏神として701年奉斎されたが,5世紀後半ころこの地に秦の民が集められたさい伴造(とものみやつこ)に任ぜられた秦酒公(さけのきみ)は酒造技術者であったと考えられ,彼らの指導が古代日本の酒造を育成したと考えられる。…

※「梅宮大社」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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