桜狩(読み)さくらがり

精選版 日本国語大辞典 「桜狩」の意味・読み・例文・類語

さくら‐がり【桜狩】

[1] 〘名〙
山野に桜をたずねあるいて観賞すること。観桜花見。桜見物。《季・春》
※宇津保(970‐999頃)吹上上「さくらかりぬれてぞ来にし鶯の都にをるは色のうすさに」
※俳諧・笈の小文(1690‐91頃)「桜がりきどくや日々に五里六里」
② (交野(かたの)が桜の名所であり、また、皇室領の遊猟地でもあったので、桜を見ながら狩をしたところからいう) 鷹狩の異称
※続古今(1265)春下・一一九「鷂(はし)鷹を末野の原の桜かり白斑(しらふ)に花の色を紛(まが)へて〈後鳥羽院〉」
馬術で用いる語。
(イ) ②で、退却ぐせのある馬が首を下横腹につけるようにまげて止まるとき、下頤の部分を鐙の先で蹴ること。花の木を折ることがあるのでこの名がある。
浄瑠璃・当流小栗判官(1714頃)曲乗り「じせんりせつなの しゅんめのきょく、是をなづけてさくらがり、父母のたづなといふとかや」
(ロ) 遠乗りで、馬の息づかいをはかって走らせる鞭のあて方。
※浄瑠璃・鑓の権三重帷子(1717)上「馬には一息つがせたり我身のあせも入かたの。月毛の駒に桜狩ひみつの手綱くりひかへ」
[2]
[一] 箏曲。平調子。文化年間(一八〇四‐一八山田検校作曲したもので、歌詞越前家息女の作という。花見の情緒を表現したもの。
[二] 長唄。弘化年間(一八四四‐四八)二世芳村孝次郎(または、十世杵屋六左衛門)の作曲といわれ、隅田川吉原の桜気分を表現したもの。

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デジタル大辞泉 「桜狩」の意味・読み・例文・類語

さくら‐がり【桜狩(り)】

山野に桜の花を求めて遊び歩くこと。花見。 春》業平なりひらの墓もたづねて―/素十
鷹狩りの異称。皇室の遊猟地であった交野かたのが桜の名所でもあったところからいう。
[補説]曲名別項。→桜狩
[類語]花見観桜

さくらがり【桜狩】[曲名]

箏曲そうきょく。文化年間(1804~1818)ごろに山田検校が作曲。越前家の姫君作詞という。花見の情景を表現したもの。
長唄。安政年間(1854~1860)に2世芳村孝次郎または10世杵屋六左衛門が作曲。江戸の花見気分をうたう。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「桜狩」の意味・わかりやすい解説

桜狩
さくらがり

箏曲の曲名。山田検校作曲の山田流箏曲。中許7曲の一つ。越前家姫君の作詞で,部分的に謡曲『右近』『吉野天人』による。松平定信が山田検校に作曲を依頼したという。全文古歌,故事をひく美文で綴られ,終曲は謡曲からは離れる。山田作品の歌物としては合の手の長いのが特色。

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