桜島(鹿児島湾)(読み)さくらじま

日本大百科全書(ニッポニカ) 「桜島(鹿児島湾)」の意味・わかりやすい解説

桜島(鹿児島湾)
さくらじま

鹿児島湾(錦江湾(きんこうわん))北奥部の姶良カルデラ(あいらかるでら)(直径20キロメートル前後)の南縁部に生じた第四紀の火山島(東西約10キロメートル、南北約8キロメートルの長円形)であったが、1914年(大正3)の溶岩流大隅(おおすみ)半島と陸続きになった。同年1月12日からの大噴火で、東側へ流出した多量の溶岩が、同月29日大隅半島との間の東桜島水道(幅約400メートル、深さ約70メートル)を埋め尽くした。西方の鹿児島市街(薩摩(さつま)半島)との間には幅約3キロメートルの西桜島水道がある。北西半部は鹿児島県桜島町に、南東半部は鹿児島市に属していたが、2004年(平成16)の市町村合併により、全域が鹿児島市となった。

 西日本火山帯に属し、安山岩からデイサイト質の複合成層火山で、日本の代表的活火山。頂部は、最高峰(標高1117メートル)の御岳(おたけ)(北岳ともよぶ)と、中岳(1060メートル)、南岳(1040メートル)の3峰からなるが、鍋(なべ)山、引ノ平(ひきのだいら)など寄生火山寄生火口も多い。火山砕屑(さいせつ)物、溶岩流、火砕流堆積(たいせき)物が複雑な地形を構成している。山頂火口は、御岳が直径約600メートル、深さ約100メートル、中岳が南北約400メートル、東西約200メートル、深さ35メートル、南岳が南北約650メートル、東西約450メートル、深さ約250メートル(噴火で変動中)。桜島は有史以後(708年~)も噴火を繰り返してきた。大規模な山頂噴火は南岳に限られたが、山腹ないし付近海底からの大きな噴火もあった。1471~1476年(文明3~8)、1779年(安永8)、1914年(大正3)、1946年(昭和21)の大噴火は山腹でおき、溶岩流が山麓(さんろく)の集落を襲った。大正噴火の火山爆発指数(VEI)は5。1972~1992年(昭和47~平成4)には南岳からの活発な爆発を繰り返した。

 2006年(平成18)からは南岳の昭和火口で噴火が始まり、しだいに活発化しており、2011年には1000回以上の爆発を繰り返した。桜島やその東方だけでなく、鹿児島市街までしばしば降灰しており、島内では泥流災害が発生している。2015年8月15日には島内を震源とする火山性地震が多発し、これまで観測されたことのない大きな地殻変動が起こったため、大規模な噴火が発生する可能性が非常に高くなっているとして、気象庁は桜島に噴火警報を発表し、噴火警戒レベルをレベル3(入山規制)からレベル4(避難準備)に引き上げた。しかし、その後火山性地震が減少し、地殻変動も止まっているため、気象庁は以前の火山活動に戻っていると判断し、噴火警戒レベルを引き下げている。

 鹿児島地方気象台と福岡管区気象台が常時火山観測を続け、火山解説情報、火山予報・警報を公表している。桜島には全国共同利用研究所の火山活動研究センターがある。

 文明(ぶんめい)・安永(あんえい)両溶岩流地域では、アラカシ、タブノキなどの照葉樹林がみられるが、大正・昭和両溶岩流地域は、裸地、貧植生地や、クロマツ、ヤシャブシなどの低木林の所が多い。半鹹水(かんすい)の小池「園山池(そのやまいけ)」でみられる紅藻類のタケコケモドキは、シドニー(オーストラリア)、ニュージーランドの一部と、分布がごく限られた珍種である。

 主要産業はミカン、ビワなどの果樹栽培である。昔から名産のサクラジマダイコンは、近年の連続的噴火による降灰砂や火山ガスで害され、生産が減少している。霧島錦江湾国立公園の一部で、古里(ふるさと)・黒神(くろかみ)温泉もあり、林芙美子(ふみこ)文学碑や埋没鳥居も知られる。鹿児島港―桜島港(袴腰(はかまごし))はフェリーボートで約15分。

[諏訪 彰・塚田公彦・中田節也 2015年8月19日]

その後の動き

2022年(令和4)7月24日20時05分、南岳山頂火口において爆発が発生。大きな噴石が弾道を描いて飛散し、火口から約2.5キロメートルまで達した。この噴火により、気象庁は噴火警戒レベルを3(入山規制)から最大のレベル5(避難)に引き上げた。鹿児島市は同日、南岳山頂火口および昭和火口からおおむね3キロメートル以内の居住地域の住民に避難指示を出した。同年7月27日、南岳山頂火口および昭和火口から2キロメートルを超える範囲に影響を及ぼす噴火が発生する可能性は低くなったため、噴火警戒レベルは3(入山規制)に引き下げられた。

[編集部 2022年8月18日]

『山口鎌次著『桜島火山の研究』(1975・日本地学教育学会)』『石川秀雄著『桜島――噴火と災害の歴史』(1992・共立出版)』『橋村健一著『桜島大噴火』(1994・春苑堂書店)』『橋口実昭著『灰降る島――鹿児島県桜島』(2000・南方新社)』


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