桃花源記(読み)とうかげんき

精選版 日本国語大辞典 「桃花源記」の意味・読み・例文・類語

とうかげんき タウクヮゲン‥【桃花源記】

中国伝奇小説。一編。東晉陶潜淵明)撰。武陵漁師渓流をさかのぼって道に迷い、桃林の奥に秦の戦乱を避けた人々の平和郷を発見。たいそうなもてなしを受けて帰宅し、また訪れようとするが再び見出し得なかったという。ユートピア物語の一つで、後世、詩や画の題材とされる。

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デジタル大辞泉 「桃花源記」の意味・読み・例文・類語

とうかげんき〔タウクワゲンキ〕【桃花源記】

中国の伝奇小説。東晋陶淵明作。桃の花の林に迷い込んだ武陵ぶりょうの漁師が、外の世界と隔絶した平和で豊かな村を見つけるが、もう一度行こうとして果たせなかった物語。「桃源郷」の語のもととなった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「桃花源記」の意味・わかりやすい解説

桃花源記
とうかげんき

中国、東晋(とうしん)の陶潜(とうせん)の著した物語。陶潜の編になるという『捜神後記(そうじんこうき)』に収められている。東晋の太元(たいげん)年間に、武陵(ぶりょう)の漁師が桃の花の林に踏み迷い、洞穴(ほらあな)を抜けて不思議な村里へ出る。村人たちは、先祖が秦(しん)の始皇帝圧政を逃れてここへきてより、外の世界と隔絶して平和に暮らしているのであった。漁師はしるしをつけながら帰り、太守に注進する。太守は漁師に案内させて探索させたが、しるしは消えていて、ついに尋ね当てることができなかった、という筋(すじ)である。これに似た話はほかにもあり、当時このような説話(仙郷淹留(えんりゅう)説話という)がはやっていたのだろう。なお、この物語より、理想郷を称して「桃源郷(境)」とする語が生まれた。

[石川忠久]

『佐藤保他訳『中国の古典26 古文真宝』(1984・学習研究社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「桃花源記」の意味・わかりやすい解説

桃花源記
とうかげんき
Tao-hua-yuan-ji

中国,東晋末~宋初の詩人陶淵明の散文作品。武陵 (湖南省) の漁夫が舟に乗って道に迷い,桃の林のなかを行くうちに異境に達したが,それは秦の頃,戦乱の世を逃れてきて,外界との接触を絶っている人々の村であったという。「桃源境」という語の由来ともなり,古代ユートピア思想の一典型として,後代に大きな影響を与えた。もと『桃花源詩』という五言詩につけられた記であるが,陶淵明の著とされていた志怪小説集『捜神後記』にも収められており,この時代の散文文学の傑作の一つ。

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