根粒菌(読み)こんりゅうきん(英語表記)root nodule bacteria

精選版 日本国語大辞典 「根粒菌」の意味・読み・例文・類語

こんりゅう‐きん コンリフ‥【根粒菌】

〘名〙 マメ科植物の根に共生して根粒をつくる細菌。植物体から炭水化物などを吸収し、空気中の窒素を固定して植物体に与える。自然界における窒素の循環に重要な役割を果たす。ハンノキなどに共生する放射状菌を含めていうこともある。根粒細菌根粒バクテリア

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「根粒菌」の意味・読み・例文・類語

こんりゅう‐きん〔コンリフ‐〕【根粒菌】

エンドウソラマメなどのマメ科植物の根に共生し、根粒をつくる土壌細菌。空気中の窒素を固定し、アミノ酸亜硝酸を植物に供給する一方、植物が光合成で生産した炭水化物を得ている。リゾビウム。根粒バクテリア。根粒細菌。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「根粒菌」の意味・わかりやすい解説

根粒菌 (こんりゅうきん)
root nodule bacteria

マメ科植物などの根に侵入してこぶ状の構造の根粒を作り,宿主と共生して窒素固定を行う細菌をいう。根粒菌のうちマメ科に共生するRhizobium属は種によって,それが共生するマメ科植物の範囲が限定され,宿主に対する親和関係で,アルファルファ,クローバー,エンドウ,インゲン,ルーピン,ダイズカウピー,レンゲの8群に分かれている。特定の根粒菌が特定の植物のみに侵入して根粒を作るのかまだ満足のいく説明はない。根粒菌が宿主植物の根毛から侵入すると,植物細胞の異常分裂と植物細胞内の根粒菌の分裂が進み,一定の構造をもった根粒組織ができあがる。この菌はアンモニウム塩を窒素源として与えると独立でも生活でき,遊離状態では運動性のある杆菌となる。根粒中では細菌は運動性を失い,形も変化して大きくなり,棍棒状などのバクテロイドといわれるものになり,この形態で宿主から供給される炭水化物を消費して窒素固定を行う。固定された窒素化合物は木部を通って地上部に送られ植物に利用される。根粒菌の窒素固定能率は,窒素固定細菌中もっとも高く,炭水化物を1g消費して200~300mgの窒素が固定され,地球上で土壌の窒素肥沃度に寄与するところが大きい。根粒菌が土壌中にいないか,あるいはいても菌量が少ないか,または土着菌の窒素固定能力が低い場合は,根粒菌の人工接種が必要である。とくに新規に農地にマメ科作物を導入するときには,人工接種が必要で,根粒菌の培養物の種子にまぶすかあるいは混ぜてすぐ播種(はしゆ)すると接種の効果が高い。
土壌微生物
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「根粒菌」の意味・わかりやすい解説

根粒菌【こんりゅうきん】

根粒バクテリアとも。マメ科植物のについてこぶを作らせ,その中に生息しながら共生の関係を結ぶ細菌の総称。またそのこぶを根粒という。リゾビウム属は代表的。遊離状態では運動性の杆(かん)菌であるが,適当な植物があると根毛内に侵入し皮部を刺激して根粒を形成,宿主から無窒素化合物,塩類,水をもらい,一方空気中の窒素を固定して宿主に与える。ゲンゲなどマメ科植物数種は窒素肥料として緑肥とされる。なお,広義の根粒菌としては,ハンノキやドクウツギなどマメ科以外の根に根粒を作るフランキア属の放線菌がある。
→関連項目空中窒素固定レンゲソウ

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android