根(仏教)
こん
仏教で、能力や知覚をもった器官をいう。サンスクリット語のインドリヤindriyaの漢訳で、原語は能力、機能、器官などの意。植物の根が、成長発展せしめる能力をもっていて枝、幹などを生じるところから根の字が当てられた。感覚をおこさせる能力をもつ器官としての目、耳、鼻、舌、身を五根(ごこん)という。また、優れた働きをもたらすもの、すなわち人間を悟りに導く、信(しん)、精進(しょうじん)、念(ねん)、定(じょう)、慧(え)の5種の道徳的な能力をいう。さらに、根は素質、根性、精神的素質、根本条件、最初の原因となるものをも意味する。
[阿部慈園]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例