化学辞典 第2版 「核燃料物質」の解説
核燃料物質
カクネンリョウブッシツ
nuclear fuel material
原子炉中で中性子を吸収して核分裂反応を連鎖的に起こし,エネルギーを発生する物質で,235U,239Pu などであるが,法律的には昭和30年制定の原子力基本法第3条第2号で,「核燃料物質とは,ウラン,トリウム等原子核分裂の過程において高エネルギーを放出する物質であって,政令で定めるものをいう」と定義されている.昭和32年制定の核燃料物質,核原料物質,原子炉及び放射線の定義に関する政令第1条で,
(1)ウラン235のウラン238に対する比率が天然の混合率であるウラン及びその化合物
(2)ウラン235のウラン238に対する比率が天然の混合率に達しないウラン及びその化合物
(3)トリウム及びその化合物
(4)前3号の物質の一又は二以上を含む物質で原子炉において燃料として使用できるもの
(5)ウラン235のウラン238に対する比率が天然の混合率を超えるウラン及びその化合物
(6)プルトニウム及びその化合物
(7)ウラン235及びその化合物
(8)前3号の物質の一又は二以上を含む物質
が「核燃料物質」と規定されている.核燃料物質,核原料物質及び原子炉の規制に関する法律第52条で,「核燃料物質を使用しようとする者は,政令で定めるところにより,文部科学大臣の許可を受けなければならない」ので,許可を受けないで核燃料物質を使用した者は,「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する」(第77条8項)となっている.ただし,同法施行令第15条の1~5項によれば,(1)~(8)項に該当しても,数量がウランの場合は300グラム以下,トリウムでは900グラム以下ならば,使用の許可を要しない.また同法第76条の2によると,「核燃料物質をみだりに取り扱うことにより,その原子核分裂の連鎖反応を引き起こし,又はその放射線を発散させて,人の生命,身体又は財産に危険を生じさせた者は,10年以下の懲役」に処せられる.なお,国際原子力機関が1996年に刊行した「電離放射線に対する防護と放射線源の安全のための国際基本安全基準(Basic Safety Standards)」に従って,規制対象をウラン1グラム以上,トリウム3グラム以上に拡げる検討が進められている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報