核分裂(物理)(読み)かくぶんれつ

百科事典マイペディア 「核分裂(物理)」の意味・わかりやすい解説

核分裂(物理)【かくぶんれつ】

原子核分裂とも。ウラントリウムプルトニウム等の重い原子核がほぼ同程度の大きさの2個以上の原子核に分裂する現象。ふつうは2個に分裂する。最初に発見された(O.ハーンとF.シュトラスマン,1938年)のは235Uがおそい中性子1個を吸収して起こす核分裂で,その生成物は(図)まで約80種にわたり,特に質量数80〜110と125〜155のものが多い。235U核の核子1個当りの結合エネルギーは核分裂生成核のそれより小さいために,分裂後余分のエネルギーが235U1個当り約200MeV放出され,これは化学反応で放出される1原子当りのエネルギーの数千万倍に当たる。さらに235U核は核分裂生成核に比べ中性子が陽子より相対的に多いので,1回の核分裂に際し中性子が平均2.5個放出される。この中性子を利用し連鎖反応を起こし,大量のエネルギー(原子エネルギー)を放出させて原子力に利用する。核分裂生成核はなお中性子が多すぎるため,β崩壊を繰り返し安定な核に変わるが,この際少数の中性子(遅発中性子)が放出され,原子炉制御に利用される。233U,239Puもおそい中性子により同様な核分裂を起こし,核燃料に利用されるが,238U,232Thも高速の中性子を吸収すれば核分裂を起こす。また235U,238U等は自発的にも核分裂を起こすが,その割合はきわめて小さい。→核融合
→関連項目核反応核兵器原子核模型原子爆弾原子炉減速材増殖炉転換炉マイトナー

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