改訂新版 世界大百科事典 「株式公開買付け」の意味・わかりやすい解説
株式公開買付け (かぶしきこうかいかいつけ)
会社の経営支配権を獲得するなどの目的から証券市場外で不特定多数の株主から株式を大量に取得すること。テークオーバー・ビッドtakeover bid(TOB),またはテンダー・オファーtender offerと呼ばれ,企業結合の一方法となっている。株主から平等に買い付けることが主たる制度目的であり,最近では発行会社が自己株式の平等買付けを行うためにも利用されるように改正がなされた。典型的には新聞に株式買付広告を出すことによって行われ,その対価は現金である場合と他の証券との交換である場合とがある。日本においては,資本自由化に伴う外資対策を契機とした1971年の証券取引法改正によって法制度化され,90年,94年に改正されている。公開買付けの結果,発行済株式総数の100分の5以上を所有することになる個人,団体,または法人が有価証券市場外で不特定多数の者に対して株券(新株引受権証書,転換社債券,新株引受権付社債券,新株引受権証券を含む)の買付け(有価証券との交換を含む)の申込み,または売付(有価証券との交換を含む)申込みの勧誘を行う場合について規制がなされている。そこでは,買付期間,買付価格,契約解除,受渡決済,買付数量と配分方法など公開買付けの条件と方法を明確化させるだけでなく,公開買付者に公開買付届出書を提出させること等により,公開買付けの申込みを受ける株主に対して有用な情報が開示されるようにしている。すなわち,公開買付けは公開買付届出書が大蔵大臣に提出されなければ行えず(27条の3-2項),その重要な記載内容が新聞紙上に広告される(27条の3)。また,株式の買付けをするには応募者に説明書を交付しなければならない(27条の9-2項)。しかし,日本では,公開買付けの事例が乏しく,敵対的な公開買付けは皆無である。大量の株式を担保にとっていてこれを実行する場合に強制的に公開買付けの手続をとる必要がある(27条の2-1項-4号)ことに留意すべきである。発行会社が自己株式を取得するために公開買付けを行う例は散見されるようになった。
執筆者:森田 章
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報