校正(印刷)(読み)こうせい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「校正(印刷)」の意味・わかりやすい解説

校正(印刷)
こうせい

印刷物をつくる過程原稿を忠実に印刷物に再現する作業をいう。書物は古くは写本に拠(よ)ったが、原本を写す筆写係、それを原本と校合する校正係分業によることが多かった。西洋での聖書の写本工房は有名だが、日本でも奈良時代に仏典漢籍の写本の際、校正係が置かれたことが知られている。近代印刷術が発明され写本が廃れてからは、校正は印刷物作製の一工程となった。日本では幕末・明治維新以後、近代印刷術が輸入され、新聞、雑誌、書籍の発行および刊行が行われるようになってから、校正という職能が確立した。校正の仕事の内容は、原稿と組版(くみはん)の試し刷り(校正刷りゲラ刷り)を照合して、組版上の文字、図版の誤りや、原稿指定(活字の大きさ、種類、体裁など)の誤りを訂正することが主であるが、原稿の内容や表現上の誤りをチェックして著者に注意を促すことも重要な一面である。校正者がかってに訂正することは原則として許されない。用語や表記の整理、統一を校正の段階で行うこともあるが、原稿整理に際して行うべきであり、本来は校正の分野ではない。

 校正は仕事の対象により文字校正、写真校正、図版校正がある。また製版・印刷方式によって、(1)活版印刷における活版校正、象眼(ぞうがん)校正、鉛版校正、機械校正、(2)写真植字における写植校正、(3)オフセット印刷における製版校正、刷版(さっぱん)校正、(4)グラビア印刷における青焼(あおやき)校正などがあり、カラー(色物)の校正を色校正という。印刷物の種類によって書籍校正、雑誌校正、新聞校正、端物(はもの)(名刺、メニュー、伝票類、挨拶(あいさつ)状など)校正に分けられる。一般に校正とは、活版校正、写植校正における文字校正をさすことが多い。

 校正の仕方は、文字校正の場合、(1)1人で原稿と校正刷りとを照合する単独校正(原稿引き合せ校正、原稿突き合せ校正とも)、(2)1人が原稿を読み、1人が校正刷りを見る読合せ校正、(3)1人で校正刷りを読んでいく素読(すよ)み校正がある。校正刷りに誤りがあれば、校正記号を用いて赤字で訂正する(入朱)。校正後、校正刷りは印刷所に戻され、赤字に従って組版が直される(赤字差し替え)。こうした作業を初校、再校、三校と繰り返し、赤字のなくなったところで校了とし、印刷作業に回す。赤字がわずか残っているが印刷所の責任において校了にする場合は責任校了責了)とする。さらに部分的に校正を行うことを念校、抜き念校という。その過程で必要があれば著者、訳者、編者などによる著者校正(著者校)を行う。印刷所の営業係を待たせておいて行う校正を待校(まちこう)といい、印刷所に出向いて校正を行うことを出張校正という。印刷所があらかじめ行う校正を内校(うちこう/ないこう)、出版社の内部で行う校正を社内校正、外部に委嘱する場合を社外校正(外校(そとこう))という。出版社、新聞社などで専門の校正係を置かないで、編集者が校正を行うことも少なくない。社外校正は普通、ページ当りまたは時間当りの請負契約であり、マスコミ界では広く用いられている。

[鈴木兼吉]

『鈴木兼吉他著『校正技術』上下(1982・日本エディタースクール出版部)』『西島九州男著『校正夜話』(1982・日本エディタースクール出版部)』『加藤康司著『校正おそるべし』(1969・有紀書房)』


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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