染色体異常:クローン性の証明と臨床的意義

内科学 第10版 の解説

染色体異常:クローン性の証明と臨床的意義(染色体分析)

(2)染色体異常:クローン性の証明と臨床的意義
 染色体異常は数的変化と構造異常に分けられる.数的異常には異数性と倍数性の変化がある.染色体構造の再構成には,①転座,逆位,挿入,②欠失,③均一染色部位(homogeneously staining region:HSR)と二重微小染色体(double minute,dm)があり,各々の染色体異常は切断点や欠失の領域に含まれる遺伝子変異が生じていることが多い.また,HSRとdmは遺伝子増幅に関与しているが,血液腫瘍ではまれな異常である. 臨床的に重要な点は,特定の染色体異常が複数の細胞に検出されることが単クローン性の証明になるだけでなく,病型診断や予後推定に寄与する点である.細胞遺伝学的には,少なくとも2個以上の細胞に同一の染色体異常が認められる場合にクローン性があると判断される.モノソミーのように染色体1本が欠失する場合には,3個以上の細胞に同一の異常が認められた場合をクローン性異常と判定する.分析細胞のうち1個だけが異常を示すsingle cell abnormalitiy(SCA)が疾患や病型に特異的な染色体異常である場合には,診断を補助する重要な情報になると考えられ,次に述べるFISH法で間期核を解析しクローン性の証明をする必要がある.腫瘍では病勢の進行に伴って染色体異常が複雑化する現象が認められ,核型進展といわれる.慢性骨髄性白血病で知られているように,核型進展にも疾患や病型に特異性が認められる.
 一方,染色体分染法には,次のような問題点がある.①染色体バンド1個以下の微細な異常を同定できない.②複雑な染色体構造異常の正確な同定が困難であり,結果の客観性が乏しい.③分析細胞が少数の場合には,小集団の異常クローンを検出することが困難である.④分裂像が回収できなければ検査できない.これらの問題点は,FISH法とSKY法で克服できる.[谷脇雅史]
■文献
阿部達生編著:造血器腫瘍アトラス,第3版,日本医事新報社,東京,2000.古庄敏行監修・編:臨床染色体診断法,金原出版,東京,1996.
谷脇雅史編著:血液腫瘍−MIC-M分類から治療まで.先端医学社,東京,2005.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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