某・何某(読み)なにがし

精選版 日本国語大辞典 「某・何某」の意味・読み・例文・類語

なに‐がし【某・何某】

[1] 〘代名〙
[一] 他称。
① 人や所の名、また事物の名称などを知らない時に、その名の代わりとして用いる。また、知りながらもその固有の名称自体を問題としない時や、故意にあいまいにしたりしていう場合にも用いる。
※宇津保(970‐999頃)嵯峨院「物奉る人を、片去りて奉れ。そのなにがし、おもてを」
※狐の裁判(1884)〈井上勤訳〉一「我が朋友の某甲(ナニガシ)が或方(あるかた)へ行きたる帰途(かへるさ)
② 相手が知っているような事柄をわざとぼかしていう時に用いる。
※宇津保(970‐999頃)嵯峨院「聯句一句二句作らせしに、物し給はずなりしかば、闇の夜のなにがしのここちなんせし」
[二] 自称。やや格式ばった表現であるが、謙譲の意を含めて用いることもある。男性が用いる。
※枕(10C終)一〇四「なにがしが見侍れば書き給はぬなめり」
[2] 〘名〙
① 中世頃の用法で、その土地での名家豪族の人であることを表わす。
御伽草子・鶴の草子(古典文庫所収)(室町末)「いにしへはそのところのなにがしにて人にもてかしづかれ人にうらやまれたる人なれども」
数量、特に金銭の額について、あまり多くないことを漠然と表現するのに用いる。→なにがしか
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙一四「とても若干(ナニガシ)御祝儀などにハお気が附さうにもない客種

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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