柏・槲・檞(読み)かしわ

精選版 日本国語大辞典 「柏・槲・檞」の意味・読み・例文・類語

かしわ かしは【柏・槲・檞】

〘名〙
① ブナ科の落葉高木。各地の山野に生え、また、庭木ともされる。高さは時に二〇メートルを超える。樹皮は厚く、縦に裂ける。新枝には軟毛が密布。葉は倒卵形で長さ一〇~二〇センチメートル、縁に波状の大きな鈍鋸歯(どんきょし)がある。若葉は両面に星状毛が密布するが、後に裏面だけに残り、表面はなめらかになる。雌雄同株。四~五月頃、新枝の基部から長さ約九センチメートルの黄褐色の雄花穂を垂下し、また新枝の葉腋(ようえき)に短い雌花穂をつける。秋、多数の鱗片から成る椀形の殻斗(かくと)に半分以上まで包まれた、長さ一・五~二センチメートルの卵球形の堅果をつける。殻斗の鱗片は外反している。材は薪炭用、樹皮はタンニン染色に用い、葉は柏餠を包む。もちがしわ。かしわぎ。
播磨風土記(715頃)讚容「柏(かしは)(さは)に生ふるに由りて、号(なづ)けて柏原と為」
上代、飲食物を盛り、また祭祀具として用いられた木の葉の食器。
※古事記(712)中「髪長比売に大御酒(おほみき)の柏(かしは)を握(と)らしめて」
③ 植物「ほおのき(朴木)」の異名。〔和訓栞後編(1887)〕
④ 「かしわもち(柏餠)①」の略。
※はやり唄(1902)〈小杉天外〉七「お柏餠(カシハ)…まア甘味(おいし)さうだこと」
⑤ 紋所の名。柏の葉を図案化したもので三つ柏、抱き柏、丸に土佐柏、結び柏など種類は多い。
[語誌](1)古くカシワと呼んだものに、ヒノキ科のコノテガシワアスナロ、ヒノキなど漢名に柏の字を持つ細い枝のものと、今のブナ科のカシワに代表される広い葉のものとがある。前者には、「万葉集」に、コノテカシワと、シダ類のイワヒバを指すイワドカシワとがあり、後者にはモクレン科ホオノキのホオガシワと、シダ類のオオタニワタリのミツナカシワがあり、いずれも日本に生える植物では大きな葉を持つ代表種である。
(2)カシワは広い「炊葉(かしいば)」であるとされるが、細い枝をもつ柏の仲間では、土器で食物を蒸すのに、イブキ柏槇)が詰め物として用いられたという説もあり、広い葉のオオタニワタリは食物を包んで蒸焼きにするのに、ホオノキ、カシワ、アカメガシワ(別名菜盛葉)などは食物を盛るのに用いられたという。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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