デジタル大辞泉
「枷」の意味・読み・例文・類語
かせ【×枷】
《「かし(枷)」の音変化》
1 昔の刑具の一。鉄や木で作り、罪人の首・手・足などにはめて、からだを自由に動かせないようにするもの。桎梏。かし。
2 心理的、物理的に行動の妨げになるもの。「古いしきたりが枷になる」
3 他人の行動を制約するための言いがかり。口実。
「些とばかりの貸しを―に」〈鏡花・歌行灯〉
4 三味線で上調子を弾くとき、音を高くするために用いる細い棒。木や象牙で作り、両端の穴に糸を通し、棹に当てて縛りつける。
5 俳優が自分の演技を効果的にするために使う人や物。
「懐より財布を引き出し、これを―に立ち回り」〈伎・小袖曽我〉
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かせ【枷】
〘名〙 (「かし(枷)」の変化した語)
① 鉄や木でつくり、刑具として罪人の首や
手足にはめたり、また、
家畜につけたりして、自由に行動できないようにするもの。
桎梏(しっこく)。かし。
※金刀比羅本
保元(1220頃か)中「甲の鉢付の板を左より右へ挊
(カセ)に
つつと射ぬかれたり」
② 自由な心や行動の妨げとなるもの。ほだし。
※
浄瑠璃・堀川波鼓(1706頃か)下「ささゆるもかせと成」
※二日物語(1892‐1901)〈幸田露伴〉彼一日「養はれたる
恩義の桎梏
(カセ)に」
③ 他を攻撃したり、いいがかりをつけたり、動きを妨げたりするための手段や口実となるもの。
※歌舞伎・貞操花鳥羽恋塚(1809)五立「
其方達が敵を枷に、有国めを追ひ返したばっかり」
④ 俳優の演技を助ける手段となる
小道具や
子役など。
※歌舞伎・彩入御伽草(1808)
辻堂の場「
両人、抱き子を枷に立廻りの
タテ」
⑤ 三味線の上調子を弾く時、音を高めるために弦の上から棹
(さお)に当てるもの。木や象牙、時に金属で作った
棒状のもので、横にして紐で結びつける。
※国町の
沙汰(1674)「
紫檀の三味線〈略〉銀のかせ掛」
かし【枷】
〘名〙 鉄や木で作り、罪人の首、手、足などにはめて自由を束縛する刑具。首かし、手かし、足かしなどがある。かせ。
※
正倉院文書‐天平宝字六年(762)雑材并檜皮和炭等納帳「架十枝 各長一丈六尺方三寸」
※
新撰字鏡(898‐901頃)「鎖 連也 足加志 又加奈保太志」
かせ・ぐ【枷】
〘他ガ四〙 (名詞「かせ(枷)」の動詞化) 動きを妨げる。支えとめる。防ぐ。
※保元(1220頃か)中「しばしば矢にかせがれて溜(た)まる様にぞ見えし」
かせぎ【枷】
〘名〙 (動詞「かせぐ(枷)」の連用形の名詞化) さえぎるもの。防ぐもの。防御物。
※浄瑠璃・善光寺御堂供養(1718)二「岩のかせぎに身をひそめ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
枷【かせ】
械とも書き,〈かし〉ともいう。昔の刑具で,罪人の手足や首などを拘束するもの。木製または金属製で,首枷,足枷,手枷などがある。
→関連項目刑具
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世界大百科事典(旧版)内の枷の言及
【刑具】より
…中国律の笞(ち),杖(じよう)は後者の例である。自由刑では手錠([手鎖](てじよう)),枷(かせ)が代表的であり,これらは戒具としても使用される。前近代の刑罰は一般に名誉刑的要素をもっているが,とくにその性格が著しい刑具に,西洋のさらし台,江戸時代の穴晒箱(あなざらしばこ),罪科を記した捨札(すてふだ)および幟(のぼり)などがある。…
※「枷」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」