果皮
かひ
子房が発達して果実になるとき、子房壁、すなわち心皮(しんぴ)の部分をいう。したがって中に種子を含み、種子の保護、種子の散布、動物による捕食などによって種子が散布される働きをする。一般に果皮は外(がい)、中(ちゅう)、内(ない)の3層に区別され、その発達の状態は果実によりかなり違いがある。外果皮は果実の表面を覆い、普通の表皮組織のように、気孔や毛のような付属物をもつことがある。中果皮は多層の柔組織で、液果のような場合にはとくによく発達する。内果皮は子房の内壁で、モモ、ウメの場合には、ここの部分が石(せき)細胞の組織となり、石果(せきか)(核果(かくか))をつくる。ミカンなどの果実ではこの内果皮の部分の細胞が袋状になり、ここに液を蓄え、子房室を満たしている。
[吉田 治]
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果皮
かひ
pericarp
種子植物の果実のうち,真果においては,心皮に由来した部分,偽果においては子房以外の部分,たとえば萼片,包片,花托などが加わって発達した組織をいう。果皮が乾燥するものは乾果,液汁に富み多肉化するものは液果。また果皮が裂けるものは裂開果,果皮が閉じたままのものは閉果と呼ばれる。多肉果の果皮はよく発達し,外側の強くて内部保護の役割をしている外果皮 epicarpと,多肉質で水分が多い内果皮 endocarpとに分けられる。ただし,核果の場合には内果皮の内側は硬い殻になるので,そのまま多肉質で残る部分を中果皮 mesocarpといって区別する。
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か‐ひ クヮ‥【果皮】
〘名〙
① 果実のうち、種子以外の部分。主に子房壁が成熟してできたもので、組織的には内・中・外の三層に分けられる。
② 一般には、果実の表面をおおっている皮をさし、外果皮の意味で用いることが多い。〔植物学語鈔(1886)〕
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か‐ひ〔クワ‐〕【果皮】
1 果実で、ふつう種子を包む部分。外果皮・中果皮・内果皮が区別されるものがある。
2 果実の表面を覆う外皮。
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出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
世界大百科事典内の果皮の言及
【実】より
…
[実の成熟]
実が熟し,子房壁が大きくなるとともに組織の分化が起こる。狭義には子房壁の発達したものが果皮pericarpである。下位子房に由来した実では,子房壁と花管の発達した部分が区別できる(ナシ,リンゴ)こともあるが,はっきりしないほうが多く,たとえ両者の区別ができたとしても,後で述べる果皮の組織分化は下位子房全体として起こる。…
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