林真理子(読み)ハヤシマリコ

デジタル大辞泉 「林真理子」の意味・読み・例文・類語

はやし‐まりこ【林真理子】

[1954~ ]小説家エッセイスト。山梨の生まれ。コピーライターを経て、現代女性の心理焦点を当てたエッセー人気を得る。小説では官能的な恋愛ものを多く手がける。「最終便に間に合えば」「京都まで」で直木賞受賞。他に「星影のステラ」「不機嫌な果実」、エッセー集「ルンルンを買っておうちに帰ろう」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「林真理子」の意味・わかりやすい解説

林真理子
はやしまりこ
(1954― )

小説家。山梨県山梨市生まれ。生家書店で、文学好きの母親の影響を受けて育つ。1976年(昭和51)日本大学芸術学部文芸科卒業。大手出版社をはじめ30社以上の就職試験を受けるが、すべて不採用。このときの悔しさ、情けなさはのちにいくつかのエッセイに書かれる。78年からコピーライター養成講座に参加、次々に優秀作を生み出し、広告制作会社に就職する。81年には西友の「つくりながら、つくろいながら、くつろいでいる。」のコピーでTCC(東京コピーライターズクラブ)広告賞新人賞を受賞し、コピーライターとして独立。82年、初エッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を出版、モテたい痩せたい結婚したいといった女性のホンネを赤裸々に描いてベストセラーとなり、一躍人気エッセイストに。「ルンルン」は当時の流行語になった。翌83年『花より結婚きびダンゴ』『幸せになろうね』『夢みるころを過ぎても』『ルンルン症候群』と仕事も結婚も美しさも手に入れたい女性の欲望を軽妙に描いたエッセイ群は、同性の女性たちの強い支持を得る。自身もテレビ番組やCMに登場するなど時代の寵児として話題を集める。この頃より小説を書き始め、自伝的作品『星に願いを』(1983)で小説家デビュー。84年『野性時代』1月号に掲載された初の短編小説「星影ステラ」がいきなり直木賞候補となり、大型新人作家の登場と評される。85年、郷里山梨の女子高校生の多感な青春を描いた『葡萄が目にしみる』で再び直木賞候補に。86年「最終便に間に合えば」「京都まで」の2作によりついに第94回直木賞を受賞。「男と女の卑しさとイヤラシサを描くのが実に上手だが、そのぶん後味が悪い」(山口瞳)、「林真理子独特の新しい存在感が胡座(あぐら)をかいている」(黒岩重吾)と受賞作のわりにはいささか厳しい評価だった。

 歌人下田歌子を主人公にした『ミカドの淑女(おんな)』(1990)で初の歴史小説に挑戦、新境地を開拓。『白蓮れんれん』(1994)で柴田錬三郎賞を受賞。現代を生きる男と女の心理を艶(なまめ)かしく描く官能的作品でも腕の冴えをみせ、不倫をテーマにした『不機嫌な果実』は96年(平成8)のベストセラーとなり、翌97年には映画化、ドラマ化もされる。97年、連作小説集『みんなの秘密』で吉川英治文学賞受賞。

[関口苑生]

『『ルンルンを買っておうちに帰ろう』『花より結婚きびダンゴ』『夢みるころを過ぎても』『ルンルン症候群』『星影のステラ』『葡萄が目にしみる』(角川文庫)』『『白蓮れんれん』(中公文庫)』『『ミカドの淑女』(新潮文庫)』『『最終便に間に合えば』『不機嫌な果実』(文春文庫)』『『幸せになろうね』(光文社文庫)』『『星に願いを』『みんなの秘密』(講談社文庫)』

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「林真理子」の解説

林真理子 はやし-まりこ

1954- 昭和後期-平成時代の小説家。
昭和29年4月1日生まれ。はじめコピーライターとして知られ,昭和58年エッセイ集「ルンルンを買っておうちに帰ろう」がベストセラーとなる。61年小説「最終便に間に合えば」「京都まで」で直木賞。平成2年結婚。伝記ものも手がけ,7年「白蓮れんれん」で柴田錬三郎賞。10年「みんなの秘密」で吉川英治文学賞。山梨県出身。日大卒。

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