枕崎(市)(読み)まくらざき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「枕崎(市)」の意味・わかりやすい解説

枕崎(市)
まくらざき

鹿児島県南西部、薩摩半島(さつまはんとう)南端の市。1949年(昭和24)市制施行。東シナ海に臨む温暖地で、秋には台風の常襲地帯となる。枕崎台風(1945)とルース台風(1951)では大被害を受けた。JR指宿枕崎線(いぶすきまくらざきせん)の終点で、国道225号、226号、270号の結節点。1991年(平成3)日本初のコミューター空港が開設されたが、2013年に閉港。その後、ヘリポートとして利用。薩摩藩時代は鹿籠郷(かごごう)とよばれ島津一族の喜入氏(きいれうじ)の領地。現市街地の北郊に麓(ふもと)集落があった。近世初頭に鹿籠金山が発見され、馬牧や塩田もみられた。宝永(ほうえい)年間(1704~1711)にかつお節の製法が伝えられてからカツオ漁業が盛んとなり、1775年(安永4)漁港開港。明治末期以降、漁船の動力化が進むにつれ遠洋漁業の根拠地として発展、1969年(昭和44)には特定第3種漁港に指定されている。2011年の年間水揚量は9.6万トン、うちカツオは3.1万トンで、ほかにアジ、サバなどが多い。かつお節製造業者は約60、生産量約1万6000トン(全国1位)に上り、練り製品や冷凍品の製造も盛ん。農業は不振であったが、畑灌漑(かんがい)工事の完成によりサツマイモ、促成野菜、ポンカンなどの栽培が増えた。生産額の多いのは茶で、かつて枕崎紅茶の栽培に成功したことがあり、農業・食品産業技術総合研究機構果樹茶業研究部門の茶業研究拠点が置かれている。西日本一といわれる電照ギクも有名。南薩摩の十五夜行事(みなみさつまのじゅうごやぎょうじ)は国指定重要無形民俗文化財。西隣の南さつま市から立神(たてがみ)に至る海岸は坊野間(ぼうのま)県立自然公園域に含まれる。面積74.78平方キロメートル、人口2万0033(2020)。

[白石太良]

『『枕崎市史』(1969・枕崎市)』


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

排外主義

外国人や外国の思想・文物・生活様式などを嫌ってしりぞけようとする考え方や立場。[類語]排他的・閉鎖的・人種主義・レイシズム・自己中・排斥・不寛容・村八分・擯斥ひんせき・疎外・爪弾き・指弾・排撃・仲間外...

排外主義の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android