松竹梅(読み)しょうちくばい

精選版 日本国語大辞典 「松竹梅」の意味・読み・例文・類語

しょう‐ちく‐ばい【松竹梅】

[1] 〘名〙
① 松と竹と梅。冬の寒さに耐えて松・竹は緑を保ち、梅は花を咲かせるので、古来「歳寒の三友」と称し、めでたいもののしるしとして、画題や祝い事の飾り、立花などに用いられる。《季・新年》
※空華集(1359‐68頃)三「和荷山九峰、春雪賦松竹梅鈍夫雲心二老」 〔李邕‐題画詩〕
② 品物や席などを三等級に分けたとき、それぞれの等級にかえて用いる語。
[2] 邦楽の曲名。めでたい曲として代表的。
[一] 地歌、箏曲。江戸末期、大坂の三津橋勾当(こうとう)作曲。梅に鶯、松に鶴、竹に月を配したもので、にぎやかな手事(てごと)(=間奏)がある。このあとをうけて「新松竹梅」「明治松竹梅」などが作られた。
[二] 長唄。「室咲松竹梅」「君が代松竹梅」など数曲の通称。三世杵屋正次郎作曲の「室咲松竹梅」が最も有名。
[三] 河東節。四世山彦河良作曲。文政一〇年(一八二七)正月初演。能「老松(おいまつ)」の詞章に梅と竹と添え、郭気分を出したもの。

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デジタル大辞泉 「松竹梅」の意味・読み・例文・類語

しょう‐ちく‐ばい【松竹梅】

松と竹と梅。
三つとも寒さに耐えるところから、歳寒三友とよび、めでたいものとして慶事に使われる。
品物などを三つの等級に分ける際に用いられる語。ふつう松を最上級とする。
うなぎ屋で長時間待たされることを「待つ(松)だけ(竹)うめ(梅)え」としゃれていう語。かつて、うなぎの蒲焼きは注文を受けてからさばいて焼いたので、時間がかかったことから。

地歌箏曲そうきょく。江戸末期に大坂の三橋勾当みつはしこうとうが作曲。梅にうぐいす、松に鶴、竹に月を配した歌詞で、にぎやかな手事てごとがある。
長唄。「室咲むろざき松竹梅」「君が代松竹梅」などの通称。2世杵屋正次郎作曲の「室咲松竹梅」が最も流行。
河東節。4世山彦河良作曲。文政10年(1827)初演。謡曲老松おいまつ」の詞章に竹と梅の詞を添え、くるわ気分を出した御祝儀物。

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改訂新版 世界大百科事典 「松竹梅」の意味・わかりやすい解説

松竹梅 (しょうちくばい)

邦楽の曲名。狭義には,地歌・箏曲および胡弓曲の特定の曲をいうが,広義には,曲名中に〈松竹梅〉の語を含む邦楽曲すべての略称または総称として用いられる。慶事の象徴たる松竹梅を詠みこんでいるので,祝儀曲の代表とされ,類曲も多い。なお,落語その他の芸能の素材としても扱われている。(1)地歌・箏曲 三つ橋勾当作曲の三味線手事物が最古典曲で,地歌〈三役物〉の一つでもあり,〈大阪十二曲〉の一つでもある。手事に〈巣籠地(すごもりじ)〉が合わされる〈地もの〉の代表曲でもあるが,古くから胡弓および箏の手が付けられており,箏の手は流派,地域により異なる。胡弓曲としても各地で作られ,本曲の一つとされる。ほかに,〈松竹梅物〉としては,2世菊沢検校作曲《新松竹梅》(替手菊芳秋調,箏菊塚与一手付),菊高検校作曲《文明松竹梅》などがあり,単独の箏曲としては,菊塚与一作曲《明治松竹梅》(箏高低合奏),宮城道雄作曲《昭和松竹梅》(箏2部,尺八)などがある。(2)長唄 《松竹梅》と通称される曲がいくつかあり,歌い出しの語を冠して区別される。2世杵屋(きねや)正次郎作曲《室咲き松竹梅》,3世正治郎作曲《君が代松竹梅》など。ほかに,11世杵屋六左衛門作曲《三曲松竹梅》には,箏や胡弓の手を模した三味線の手があり,12世六左衛門作曲《新松竹梅》には,地歌のそれが直接取り入れられている。(3)そのほか,4世荻江露友作曲の荻江節三部作《松》《竹》《梅》,4世山彦河良作曲の河東節の《松竹梅》もある。
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松竹梅 (しょうちくばい)

松竹梅を中国では歳寒三友と呼ぶ。中国の北宋後半の文人官僚文同とその従弟の蘇軾(そしよく)らにより文人たちのあいだで墨戯としての墨竹の流行が始まった。その後,墨戯はモティーフを,梅,蘭,菊,松等に広げ,冬期に色を変えぬ松竹や花を開く梅を君子の節操の象徴としてとりあげる機会も多くなり,これを歳寒三友と呼んだ。この主題は日本にもとり入れられたが,吉祥のシンボル的性格がより強調されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「松竹梅」の意味・わかりやすい解説

松竹梅
しょうちくばい

縁起物の一つで、鶴亀(つるかめ)などとともに吉祥のものとされる。中国では、風雪厳寒に耐えて緑を保つ松・竹と他の植物に先駆けて花を開く梅を、高潔・節操・清純などの象徴として歳寒三友(さいかんさんゆう)とよび、絵画や器物などに用いられた。日本には奈良時代に伝わり、慶事や新年の飾り物にされ、『万葉集』や『古今和歌集』などにもみえるが、室町時代には謡曲に取り入れられて慶事の席で謡われるようになった。江戸時代になり長唄(ながうた)や河東節(かとうぶし)その他の祝儀曲として数多く作曲され、三橋勾当(みつはしこうとう)の地歌箏曲(じうたそうきょく)は広く知られている。また、室町時代からは、強い生命力を表す松に成長の早い竹を添えて新年に門口に飾り延年を祝うようになった。

[佐藤農人]

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「松竹梅」の解説

しょうちくばい【松竹梅】

京都の日本酒。酒名は、大正9年(1920)「つねに人々のよろこびの酒でありたい」との願いを込めて命名。全国新酒鑑評会で受賞実績多数。蔵元の「宝酒造」は天保13年(1842)創業。焼酎、ソフトアルコール飲料、調味料なども手がける大手メーカー。京都・伏見と兵庫・神戸などに製造拠点を展開。所在地は京都市伏見区竹中町。

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百科事典マイペディア 「松竹梅」の意味・わかりやすい解説

松竹梅【しょうちくばい】

地歌,箏曲の曲名。三つ橋(みつはし)勾当作曲。享和以前に大坂で作曲された。手事物。松に鶴(つる),梅に鶯(うぐいす),月に叢竹・虫の音を配し,めでたい曲として有名。箏の手は流派によって異なる。同種の地歌・箏曲としては《新松竹梅》《明治松竹梅》《昭和松竹梅》などがある。

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デジタル大辞泉プラス 「松竹梅」の解説

松竹梅〔落語〕

古典落語の演目のひとつ。上方種。代表的な前座噺のひとつ。六代目春風亭柳橋が得意とした。オチは考えオチ。主な登場人物は、町人。

松竹梅〔日本酒〕

宝酒造が販売する清酒のブランド名。純米酒、本醸造酒など各種を揃える。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「松竹梅」の解説

松竹梅
〔宮薗〕
しょうちくばい

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
寛政2.2(大坂・中山一徳座)

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世界大百科事典(旧版)内の松竹梅の言及

【タケ(竹)】より

…また,四川省チベット族に伝わる〈斑竹姑娘〉の物語は,竹の中から生まれた美女が,権勢をたのんだ求婚者たちに難題を課して翻弄するというもので,日本の〈かぐや姫〉の説話ときわめてよく似ている。【稲畑 耕一郎】
[日本]
 竹は,歳寒(さいかん)の三友(さんゆう),すなわち,〈松竹梅〉の一つとして,日本では慶事に用いられるので,日本人と竹との密接なかかわりはよほど古い時代にまでさかのぼるかのように考えられがちであるが,その〈松竹梅〉の取合せが文献に登場するのは室町時代のことでしかなく,竹が庶民生活と離れがたく結びつくのもその時代以後のことである。 もちろん,竹は古代日本にも存在していた。…

【三つ橋勾当】より

…大坂で享和年間(1801‐04)ころ活躍。《松竹梅》《根曳の松》を作曲したが,各地各派でいろいろの替手が付けられている。この2曲は《名所土産》(作曲者不詳。…

※「松竹梅」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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