杵屋勝三郎(2世)(読み)きねやかつさぶろう[にせい]

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「杵屋勝三郎(2世)」の意味・わかりやすい解説

杵屋勝三郎(2世)
きねやかつさぶろう[にせい]

[生]文政3(1820)
[没]1896
長唄三味線方,杵勝派の家元。1世杵屋勝三郎実子。天保 11 (1840) 年,杵屋小三郎から2世杵屋勝三郎に襲名。弘化2 (1845) 年,立三味線に昇進する。住所の日本橋馬喰町にちなんで世に「馬場の鬼勝」と呼ばれた。長唄界古今を通じての名人で,幕末から明治前期にかけて,3世杵屋勘五郎,3世杵屋正次郎とともに作曲の三傑と称せられた。劇場に出向くかたわら,歌舞伎舞踊に付随して発展してきた長唄の独立をはかり,あるいは明治初期に衰退の兆しをみせていた謡曲を積極的に長唄に取り入れるなど,独特の長唄を作曲して杵勝派発展のために多大な功績を残した。作品に『都鳥』『鞍馬山』『連獅子』『時雨西行 (しぐれさいぎょう) 』『靫猿』『船弁慶』『安達原』などがある。従来,勝三郎家は勝五郎家の門弟筋にあたったが,2世勝三郎が名人であったため,その後は勝三郎家が杵勝派の家元となった。

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世界大百科事典(旧版)内の杵屋勝三郎(2世)の言及

【喜三の庭】より

…作詞者未詳。作曲者は前半合方まで2世杵屋(きねや)勝三郎,後半は3世杵屋正次郎と伝えられている。前半は三下りで,山田流箏曲《小督(こごう)の曲》の影響を受け,源仲国が小督を探した嵯峨野の秋の情趣をうたい,箏の手事の長い合方を加え,後半は二上りで,がらりと俗にくだけて廓の行事を秋草にこと寄せて述べ,豊年祝いの詞で結んでいる。…

【狸】より

…(3)長唄の曲名 本名題《昔噺狸(むかしばなしたぬき)》。1864年(元治1)木場の宴会の余興として作られたものといわれ,2世杵屋(きねや)勝三郎作曲。狸に関する話をまとめたもので,長唄としては珍しく茶気満々たる滑稽な曲。…

【長唄】より

…一方,前代に全盛をきわめた変化物舞踊もようやく行詰りをみせはじめ,さらに幕藩体制の崩壊,長唄愛好者の大名,旗本の高尚趣味の影響もあって,長唄にも復古的な傾向が現れ,謡曲を直接にとり入れた曲が作曲されるようになり,前述の《鶴亀》や《勧進帳》《竹生島》などが生まれた。この時期の唄方には天保の三名人といわれる3世芳村伊十郎,岡安喜代八,2世富士田音蔵,三味線方に10代目杵屋六左衛門,4世杵屋六三郎,5世杵屋三郎助(のち11代目杵屋六左衛門,3世勘五郎),2世杵屋勝三郎,囃子方に4世望月太左衛門,6世田中伝左衛門などがいる。明治前期(明治30年ころまで)では三味線方の3世杵屋勘五郎,2世杵屋勝三郎,3世杵屋正次郎が作曲の三傑として傑出している。…

※「杵屋勝三郎(2世)」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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