杲宝(読み)ごうほう

精選版 日本国語大辞典 「杲宝」の意味・読み・例文・類語

ごうほう【杲宝】

南北朝前期の真言宗の僧。初名弘基。高野山出家し、東寺頼宝に師事。大僧都に進み、観智院創建して第一世となる。学僧の名が高く、頼宝、弟子賢宝(げんぽう)とともに東寺の三宝と称された。著に「東宝記」「大日経疏演奥鈔」など。徳治元~貞治元年一三〇六‐六二

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「杲宝」の意味・わかりやすい解説

杲宝
ごうほう
(1306―1362)

室町~南北朝時代の真言宗の僧。東寺(教王護国寺)観智(かんち)院の開基。初め弘基(こうき)と称した。姓は源氏下野(しもつけ)国(栃木県)あるいは但馬(たじま)国(兵庫県)出身とされる。幼時、高野山(こうやさん)で出家、東寺で真言宗を学び、1348年(正平3・貞和4)東寺勧学会の学頭、1358年(正平13・延文3)法印(ほういん)、翌1359年に大僧都(だいそうず)となる。学識は深く、教学整頓(せいとん)、法流血脈(けちみゃく)の確定を行い、『東宝記(とうぼうき)』を著して東寺の歴史を明白にし、また外に向かっては禅宗を批判するなど、空海の真髄を得たと評されるほどであった。著作は、事相教相(じそうきょうそう)、史録にわたり膨大な数で、仏教学、歴史学の貴重な資料として観智院金剛蔵(こんごうぞう)に伝えられている。師の頼宝(らいほう)(1279―1330)、弟子の賢宝(げんぽう)(1333―1398)とともに、東寺の三宝といわれる。

[平井宥慶 2017年7月19日]

『東宝記刊行会編『国宝東宝記原本影印』全2冊(1982・東京美術)』

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朝日日本歴史人物事典 「杲宝」の解説

杲宝

没年:貞治1/正平17.7.7(1362.7.28)
生年:徳治1(1306)
鎌倉後期・南北朝時代の真言宗の学僧。「こうほう」とも。下野(栃木県)の人とも但馬(兵庫県)の人ともいわれ,姓は源氏と伝えられる。高野山で出家し,17歳のとき東寺に来て頼宝に師事。槙尾山の浄宝から三宝院流の灌頂を受け,南都,高野山に遊学したのち,貞和2/正平1(1346)年勧修寺の栄海より伝法灌頂を受ける。貞和4/正平3年東寺勧学会学頭,延文4/正平14年大僧都となり,塔頭観智院を創建して盛んに講義を行った。師の頼宝,弟子の賢宝と並べて東寺三宝と称せられ,また高野の宥快,根来の頼瑜と並び称される真言教学上屈指の大家で,『本朝高僧伝』にも「南山宥快頼瑜空海の皮肉を得,東寺杲宝其の骨髄を得る」と評されている。著書は後世への影響の大きな『大日経疏演奥鈔』56巻,『大日経疏鈔』27巻,『杲宝私鈔』12巻など多数がある。<参考文献>卍元師蛮『本朝高僧伝』17巻,『杲宝僧都事実』

(津田眞一)

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「杲宝」の解説

杲宝 ごうほう

1306-1362 鎌倉-南北朝時代の僧。
徳治(とくじ)元年生まれ。真言宗。下野(しもつけ)(栃木県),一説に但馬(たじま)(兵庫県)の人。京都東寺の頼宝にまなび,勧修(かじゅう)寺の栄海(えいかい)から灌頂(かんじょう)をうける。東寺の勧学会学頭となり,のち観智院を創建。大僧都(だいそうず)。真言宗の代表的な学僧で,師の頼宝,弟子の賢宝(げんぽう)とともに東寺三宝といわれた。康安2=正平(しょうへい)17年7月7日死去。57歳。法名ははじめ弘基。著作に「大日経疏演奥鈔」「東宝記」など。

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世界大百科事典(旧版)内の杲宝の言及

【観智院】より

…それにもとづいて21(あるいは15)の塔頭が建立されるが,観智院はその一つである。当院初代の杲宝(ごうほう)は,東寺最高の学僧で,南都北嶺その他から多数の聖教類を収集し,東寺教学の基礎を築いた。現在,観智院金剛蔵聖教と呼ばれているのはそれで,量質ともに日本の聖教のうちで最高のものの一つである。…

【東宝記】より

…東寺学衆杲宝(ごうほう)の編纂した東寺の歴史。仏宝,法宝,僧宝の3編8巻にわけ,東寺の歴史,堂塔,仏像,法具,聖教,法会,僧職について,文書・記録等を豊富に引用しつつ明らかにする。…

※「杲宝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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