精選版 日本国語大辞典 「東遊」の意味・読み・例文・類語
あずま‐あそび あづま‥【東遊】
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雅楽の一種目。そこで歌われる歌を東遊歌という。もと東国の地方芸能であったらしいが,奈良時代から平安時代にかけて〈東舞〉などと称して近畿でも行われるようになり,9世紀ごろ様式をほぼ完成させた。楽器は句頭(くとう)(歌の主唱者)の打つ笏拍子(しやくびようし)のほか,篳篥(ひちりき),高麗(こま)笛(元来は東遊笛),和琴(わごん)(各1名)が用いられる。全曲の構成は,“高麗調子”(“ ”印のものは,楽器だけで演奏され,歌を伴わない),阿波礼(あわれ),“音出(こわだし)”,一歌(いちうた),二歌,“駿河歌歌出(するがうたのうただし)”,駿河歌一段,駿河歌二段,“加太於呂志(かたおろし)”,阿波礼,“求子歌出(もとめごのうただし)”,求子歌,“大比礼歌出(おおびれのうただし)”,大比礼歌。これらのうち,駿河歌二段,求子歌,大比礼歌は揚拍子(あげびようし)(拍節的なリズム)で歌われる。前2者は舞を伴い,その舞を駿河舞,求子舞といい,両方舞うことを諸舞(もろまい),いずれか一方だけ舞うのを片舞(かたまい)という。《枕草子》に〈まひは,するがまひ,もとめご,いとをかし〉とあるように,平安後期には盛んであったが,室町時代に伝承が絶えた。現行の東遊は1813年(文化10)石清水臨時祭に再興されたもので,宮中や神社の祭祀に用いられる。舞人は4人もしくは6人。巻纓(けんえい)の冠に緌(おいかけ)を付け,季節の花を挿頭(かざし)とし,青摺の袍を着て太刀を佩(は)く。
執筆者:田辺 史郎
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古代歌舞。東舞(あずままい)ともいい、もと東国地方の歌舞であったものが、のちに朝廷の大儀に取り入れられ、舞楽化するに至った。駿河(するが)国(静岡県)有度(うど)浜に天人が降りて舞ったのがその起源だという伝説がある。861年(貞観3)東大寺大仏供養のおりの記録に「東舞」とみえるのを初めとして、すでにこの貞観(じょうがん)のころには春日(かすが)祭、大原野祭で行われており、以後賀茂(かも)および石清水(いわしみず)臨時祭、平野祭、賀茂祭、祇園(ぎおん)の臨時祭などでも漸次行われるようになった。宮廷では一時期とだえていたが、江戸時代に再興、訂正された。
現行の東遊の舞人は、6人ないし4人。舞人装束は青摺(あおずり)の袍(ほう)に表袴(うえのはかま)をつけ太刀を帯びる。頭には巻纓(けんえい)の冠に緌(おいかけ)をつけ、冠に季節の挿頭(かざし)の花を飾る。歌方は拍子、付歌(つけうた)、高麗(こま)笛、篳篥(ひちりき)、和琴(わごん)、それに琴持(こともち)。舞は駿河歌と求子(もとめご)歌につく。現在、東遊は宮内庁楽師により春秋の皇霊祭、神武(じんむ)天皇祭や埼玉県さいたま市大宮区の氷川(ひかわ)神社の例祭などに奏されるほか、賀茂神社、春日若宮、日光東照宮、金刀比羅(ことひら)宮の祭礼にも行われている。
[高山 茂]
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出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…日本の雅楽に用いる装束で,大別すると,日本古来の歌舞(うたまい)の舞人装束,管絃の装束,舞楽装束となり,一般にはこれらを総括して舞楽装束と称する。
[歌舞の舞人装束]
歌舞とは,神楽(御神楽(みかぐら)),大和(倭)舞(やまとまい),東遊(あずまあそび),久米舞,風俗舞(ふぞくまい)(風俗),五節舞(ごせちのまい)など神道系祭式芸能である。〈御神楽〉に使用される〈人長舞(にんぢようまい)装束〉は,白地生精好(きせいごう)(精好)の裂地の束帯で,巻纓(けんえい∥まきえい),緌(おいかけ)の冠,赤大口(あかのおおくち)(大口),赤単衣(あかのひとえ),表袴(うえのはかま),下襲(したがさね),裾(きよ),半臂(はんぴ∥はんび),忘緒(わすれお),袍(ほう∥うえのきぬ)(闕腋袍(けつてきほう)――両脇を縫い合わせず開いたままのもの),石帯(せきたい),檜扇(ひおうぎ)(扇),帖紙(畳紙)(たとうがみ),笏(しやく)を用い,六位の黒塗銀金具の太刀を佩(は)き,糸鞋(しかい)(糸で編んだ沓(くつ))を履く。…
…律令時代には雅楽寮で教習された(《令集解》)。東遊(あずまあそび)が東国芸能に始まるのに対し,大和舞は近畿の民謡を起源とすることから,しばしば対置され,たとえば861年(貞観3)3月東大寺大仏御頭供養では武官20名による東遊と並び,文官20名の大和舞が奉納されている。平安中後期に,大嘗祭(だいじようさい)の形式が整えられると,久米舞,吉志舞(きしまい),五節舞(ごせちのまい),田舞(たまい)などとともに奏されるのが慣例となった。…
※「東遊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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