東北電力[株](読み)とうほくでんりょく

百科事典マイペディア 「東北電力[株]」の意味・わかりやすい解説

東北電力[株]【とうほくでんりょく】

1951年電力再編成により東北配電・日本発送電(一部)の事業を継承して設立された9電力会社の一つ。供給区域は東北6県と新潟。水火原子力229の発電所をもち,2007年度販売電力量840億kWhで9電力中第5位。電源多様化を推進するほか,東京電力との広域融通を積極的に推進している。原子力発電所は,宮城県石巻市と女川町にまたがる女川原発(1〜3号機,1984年〜2006年運転開始,いずれも沸騰水型軽水炉で3号機は2015年までにプルサーマル実施を予定)と青森県東通村の東通原発(1号機,沸騰水型軽水炉,2005年運転開始,2号機を計画中)。2011年3月11日の東日本大震災,東京電力・福島第一原発事故を引き起こした東北地方太平洋沖地震で,女川原発は1〜3号機すべてが自動停止した。東通原発は定期点検中だった。また火力発電所の多くが,震災の被害を受け稼働停止に追い込まれた。原発の再稼働に関しては,2013年4月に原子力規制委員会が発表した原発の新規制基準(7月に実施)案では,数年単位の時間を必要とする設備の大幅な強化対策等を要求している。女川原発については,原子力規制委員会は2014年1月,規制基準に適合しているかを確かめる原発の審査会合を開き,女川原発2号機の本格的な審査に入った。東日本大震災で被災した原発を扱うのは初めてで,東北電力から地震の揺れの影響などについて説明を受け注目された。女川原発2号機は震災発生時,定期検査で原子炉を起動させた直後だった。約13mの津波に襲われ,原子炉建屋地下が浸水し,冷却水ポンプが故障した。また,当時の最大級の想定を上回る揺れにも襲われている。審査会合では東北電力は,震災後の点検で〈プラントの健全性に影響を与えるものは無いことを確認している〉と説明したが,原子力規制委員会側は〈定期検査や保安検査で,きちっと確認していく〉とした。被災した女川原発は,審査とは別に施設の健全性確認に合格しないと再稼働できない。2号機は事故を起こした福島第一原発と同じ沸騰水型炉BWR)でもあり,事故時に放射性物質の放出量を抑える排気装置(フィルター付きベント)の設置が義務づけられている。東北電力は2016年3月までに工事を終えるとしているが,原子力規制委員会からは,フィルター付きベントでは取り切れないガス状の放射性物質への対策なども求める構えである。東北電力は,東通原発を2015年7月に稼働させるべく強化工事を急ぐ方針。しかし,東通原発の敷地内の活断層の存在を調査した地震学者が一致して指摘しており,新基準案は活断層の真上にある原発は稼働を認めない方針。2013年には東通原発敷地内断層をめぐって原子力規制委員会は3回の現地調査を行い,東北電力に説明を求めたが,東北電力は活断層ではない,と主張。原子力規制委員会の専門家会合での委員会は東北電力に対し,根拠となるデータを追加して出すよう求めた。2014年3月の会合でも専門家らは主な断層のうち1本については,従来通り活断層の可能性は否定できないとの見方で一致。重要施設を横切る断層については議論を深めるにはなおデータが不足しているとして,原子力規制委員会事務局は,掘削した地層の試料などをさらに提出するよう求めた。原子力規制委員会の専門家からは〈一年前と何にも変わっていない〉と東北電力の姿勢苦言を呈する専門家もおり,議論は平行線をたどっていて東北電力は早期の再稼働審査を求めているが,審査に入る状態ではない。原子力規制委員会の有識者会合は12月,敷地内にある断層について,活断層であることを否定できないとする報告書案をまとめた。活断層ではないとする東北電の主張には再度〈十分なデータが示されていない〉とした。活断層の可能性を否定しきれなかったことで,再稼働に向けた審査がさらに長期化する可能性がある。なお,2013年3月,東北電力は福島県浪江町と南相馬市に設置を計画していた浪江・小高原発の新設を撤回すると発表した。本社仙台。2012年資本金2514億円,2011年3月期売上高1兆7087億円。売上構成(%)は,電気92,建設6,その他2。→電気事業
→関連項目節電東海第二原発浪江小高原発東新潟[発電所]ユアテック[株]

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