東京電力[株](読み)とうきょうでんりょく

百科事典マイペディア 「東京電力[株]」の意味・わかりやすい解説

東京電力[株]【とうきょうでんりょく】

略称東電。1883年設立の東京電灯(日本最初の電力会社)が前身。1951年電力再編成で関東配電・日本発送電(一部)の事業を継承して設立。9電力会社の一つ。供給区域は関東一円と山梨および富士川以東の静岡。福島原子力発電所など水火原子力189の発電所をもち,最大電力6430万kW(2001年),販売電力量2802億kWh(2009年度)はともに民間電力企業で世界最大級。原子力発電所は,福島県双葉郡大熊町と双葉町にまたがる福島第一原発,同郡富岡町と楢葉町にまたがる福島第二原発(1〜4号機,1982年〜87年運転開始,いずれも沸騰水型軽水炉)。新潟県柏崎市と刈羽郡刈羽町にまたがる柏崎刈羽原発の三ヵ所で,東京電力の事業地域でない場所に保有している。福島第一原発事故後,すべての原発が稼働を停止している。2013年4月に示された原子力規制委員会の新基準案(同年7月より実施)では,過酷事故対策,地震・津波対策について厳しい要求がなされており,原発直下に活断層の存在が認められれば建設そのものを禁止するとされた。東京電力は柏崎刈羽原発6号機,7号機の再稼働に向け敷地内などで断層調査を計画し,原子力規制委員会に規制基準の適合審査を申請。2014年2月原子力規制委員会は,東京電力の計画が妥当であるか否か調査を開始した。敷地周辺の調査地点を確認したり,地形などを観察したりする。柏崎刈羽原発の敷地内には,6,7号機のほか,複数の断層が原子炉建屋など重要施設の直下を走っている。これらの断層が12万〜13万年前以降に動いた活断層であれば,原発は再稼働できない。原子力規制委員会は審査の一環として活断層かどうかを詳しく調べることにしており,東電側も調査しているが,2015年4月段階でも結論は出ていない。泉田裕彦新潟県知事は東京電力の再稼働申請は容認したものの,一貫して東京電力の福島第一原発事故検証が不十分として再稼働を認めていない。2011年3月11日,福島第一原発は,東日本大震災をもたらした東北地方太平洋沖地震による大津波をきっかけに,原発史上最悪の大事故(原子力過酷事故)の一つを起こし,世界を震撼させる事態となった。放射性物質の放出は,37万テラベクレルもしくは63万テラベクレルと推定され,国際原子力機関IAEAは事故の深刻度をチェルノブイリ原発事故に匹敵するINESレベル7とした。津波の高さ,地震の震度・最大加速度とも東京電力の設計値を大きく上回ったことによる全電源喪失が大事故の直接の原因だが,事故発生後の東京電力のアクシデントマネジメントに不備があったことは明らかで,さらに当事者としての情報開示,説明責任の姿勢も厳しく問われた。設計から事故発生後の対応まで,東京電力の責任はきわめて重大なものと指摘された。政府は,5月内閣官房に〈事故調査委員会〉を設置した。さらに国会も,国会が主体となって東京電力などの事業体や内閣を含む行政機関などから聞き取り調査や資料提出を求める権限を持つ〈国会事故調査委員会〉を発足させた。しかし政府・国会の委員会調査報告はともに,事故発生当時の混乱状況,東京電力,国の状況把握の曖昧さ,事故当事者意識の欠如等々の壁に阻まれ,未曾有の過酷事故の全体像の解明となっているとは言い難い。とりわけ東京電力の隠蔽体質は厳しく批判されるべきであろう。さらに,2011年12月の事故収束宣言から1年4ヵ月後の2013年4月,東京電力は,福島第一原発内の地下貯水槽からストロンチウムなどを含む高濃度汚染水が大量に漏出したと発表して衝撃を与えた。漏れた量は推定約120トン,放射能は約7100億ベクレルとしている。東京電力は海洋に流出はない,と説明したが,福島県は原因究明,再発防止策の徹底,環境の影響への徹底調査を求めた。2014年4月には約200トンの高濃度汚染水が本来と違う建屋に誤って送水されていたことが判明,原子力規制委員会は東京電力に監視強化を指示した。佐藤雄平・福島県知事は,福島第一原発では原発事故から3年でトラブルが200回以上起こり,リスク管理がきわめてずさんと言っても過言ではないと厳しく指摘している。原子力災害補償制度は,異常に巨大な天災地変で損害が生じた場合,事業者は責任を免れるとの規定を設けているが,民主党・菅政権は免責条項の適用を否定,東京電力に賠償の面で第一義的な責任があるとし,被害者への賠償責任は東京電力にあるとした。東京電力には徹底的なリストラが求められ,株主の責任も指摘された。とはいえ原発をエネルギー政策の基本に据え,長年原発振興を推進してきた国も責任を免れず,政府はこの事故にともなう賠償を円滑にすすめるため,2011年4月原子力損害賠償審査会を設置,さらに2011年9月,原子力損害賠償支援機構を設立して,数兆円にのぼると予想される損害賠償に対応することを決めた。損害賠償とは別に,東京電力は事故後の処理に今後20兆円の費用を必要とするという指摘もなされている。2012年7月原子力損害賠償支援機構は,東京電力への1兆円の出資を完了,この結果,同機構が東京電力の議決権の50.11%を握ることとなり,実質国有化された。なお,東京電力は,大震災と原発事故にともない,2011年3月〜4月に計画停電を実施した。2011年資本金9009億円,2011年3月期売上高5兆3685億円。連結総資産14兆2559億円。特別損失1兆7000億円を計上し,当期純損益は約1兆2000億円という巨額にのぼった。売上構成(%)は,電気98,情報・通信他2。→電気事業原子力発電原子力産業原発事故
→関連項目姉崎[発電所]今市[発電所]鹿島[発電所]関電工[株]新高瀬川[発電所]節電袖ヶ浦[発電所]玉原[発電所]東海第二原発日本軽金属[株]東通原発平岩外四広野[発電所]福島第二原発富津[発電所]横浜[発電所]吉田昌郎

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android