杯中の蛇影(読み)はいちゅうのだえい

精選版 日本国語大辞典 「杯中の蛇影」の意味・読み・例文・類語

はいちゅう【杯中】 の 蛇影(だえい・じゃえい)

(中国、漢の杜宣が、酒を飲んでいて杯中に映った弓の影を蛇と見誤り蛇を飲んだと思って病気になったが、あとでそれが弓の影であったと知るとたちまち治ったという「風俗通‐怪神」に見える故事による) 疑えば、なんでもないことまでが神経を悩ますもとになるということのたとえ。疑心暗鬼
結婚生態(1938)〈石川達三〉一五「彼女は一層疑惑をふかめ、盃中の蛇影(ダエイ)を見るに違ひない」

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デジタル大辞泉 「杯中の蛇影」の意味・読み・例文・類語

杯中はいちゅう蛇影だえい

《杯中に蛇の影があるのを見て、蛇を飲んだと思って病気になったが、後にそれは弓の影であったと知り、病気がたちまち治ったという「風俗通」怪神の故事から》疑い惑う心が生じれば、つまらないことで神経を悩まし苦しむことのたとえ。

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故事成語を知る辞典 「杯中の蛇影」の解説

杯中の蛇影

疑えば、何でもないことまでが神経を悩ます種になることのたとえ。

[使用例] 彼女は一層疑惑をふかめ、はいちゅうの蛇影を見るに違いない[石川達三*結婚の生態|1938]

[由来] 「風俗通―怪神」に見えるエピソードから。二世紀ごろ、後漢王朝の時代の中国での話。せんという人物が、友人の家で酒を飲んでいたとき、杯の酒の中に蛇のような影が見えるのが気になりました。そのまま飲み続けた彼は、しばらくして病気になってしまいます。心配した友人が話を聞くと、杜宣は、酒と一緒に蛇を飲んでしまったと思っているようす。友人が、それは壁に懸けてあった赤い弓の影だと教えると、病気はたちまち治ったということです。なお、「蛇影」は「じゃえい」とも詠みます。

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