精選版 日本国語大辞典 「村田春海」の意味・読み・例文・類語
むらた‐はるみ【村田春海】
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江戸後期の歌人、国学者。字(あざな)を士観(さちまろ)、号を琴後翁(ことじりのおきな)・織錦斎(にしごりのや)など、通称を平四郎という。江戸・日本橋の豪商の家に生まれる。父春道や兄春郷(はるさと)とともに賀茂真淵(かもまぶち)に学んだ。一時、幕府の連歌師阪昌周(ばんしょうしゅう)の養子となり、阪昌和を名のった。のち村田家に戻って家を継いだが、大通漁長(だいつうぎょちょう)(一説に帆船)の名で遊蕩(ゆうとう)し破産した。以後、松平定信(さだのぶ)から出入り扶持(ぶち)を給されるなどの眷顧(けんこ)を受け、加藤千蔭(ちかげ)とともに江戸の歌壇に重きをなした。青年時代には一時期、服部仲英(はっとりちゅうえい)や鵜殿士寧(うどのしねい)に従って漢詩文を学んだこともある。真淵の門人であるが、歌風は真淵の万葉風を受け継がず、古今調の才気の勝った理知的な詠風を特徴とする。しかし、歌よりも、むしろ漢詩文の素養に基づく流麗暢達(ちょうたつ)な文章にみるべきものがあり、この時期の名文家と評されている。家集に『琴後集(ことじりしゅう)』(1813)があり、「心あてに見し白雲(しらくも)は麓(ふもと)にておもはぬ空に晴るゝ富士のね」などの代表歌を収める。擬古小説に『竺志船(つくしぶね)物語』(1814)があり、『織錦斎随筆』などの随筆も多い。また毒舌家で論難書も多いが、千蔭とともに匿名で香川景樹(かげき)の歌を非難した『筆のさが』が名高い。文化(ぶんか)8年2月13日没。
[揖斐 高]
『『村田春海』(『森銑三著作集7』所収・1971・中央公論社)』
(久保田啓一)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報
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江戸中期の国学者。通称は平四郎。舎号は錦織舎(にしごりのや),琴後翁(ことじりのおきな)。江戸日本橋の富裕な干鰯(ほしか)問屋に生まれる。父春道,兄春郷にならい幼年より賀茂真淵に従学。歌文に秀れた才を発し,加藤千蔭とともに真淵門下の双璧と称せられる。遊興を好み,十八大通の一人に数えられたが,そのため家産を傾けた。歌風は古今調を理想とし,江戸派と呼ばれ,歌壇に大きな勢力を張った。本居宣長とも交友したが,その古道説や漢学排斥には終始批判的で,本居派とは一線を画した。門下に清水浜臣,岸本由豆流,小山田与清などの逸材が出ている。《新撰字鏡》を発見,紹介したことでも知られる。著書に《琴後集(ことじりしゆう)》《和学大概》《歌かたり》《織錦斎随筆》など。
執筆者:南 啓治
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1746~1811.2.13
江戸中・後期の国学者。本姓は平,通称は平四郎,字は士観(さちまろ),号は織錦斎・琴後翁(ことじりのおきな)。江戸の干鰯(ほしか)問屋に生まれ,幕府連歌師の坂昌周の養子となる。のち本家を相続したが身代を傾け,隠居後は風雅を事とした。漢籍を服部白賁(はくひ)に,国典を賀茂真淵に学び,加藤千蔭とともに江戸派歌人の領袖として名を馳せ,松平定信の寵遇をうける。著書は歌文集「琴後集」「和学大概」「竺志(つくし)船物語」。真淵の「賀茂翁家集」を編纂した。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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…のみならず,儒学,仏教はもとより,キリスト教までが日本の正史の伝承の訛伝(よこなまり)であるとして,日本普遍思想ともいうべき排外主義への傾斜を深め,国学のイデオロギー化への一転機をもたらしたのである。 一方,真淵の門弟だった村田春海(むらたはるみ)は,真淵が人に教えた〈道〉とは,〈歌のまなびと,古書を解釈する学〉(《明道書》1804編)以上のものではなかったとする信念から,宣長の古道信仰に対してはこれを〈付会の説〉と評してきわめて批判的であった。古学を思想的な〈道〉の理念に結びつけることに冷静な距離を保ったのである。…
※「村田春海」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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