(読み)さつ

精選版 日本国語大辞典 「札」の意味・読み・例文・類語

さつ【札】

[1] 〘名〙
① ふだ。また、書状。手紙
※台記‐康治二年(1143)五月二五日「余帰家後、以札〈敦任奉〉遣俊雅朝臣
※江戸繁昌記(1832‐36)初「札・楮、二牌、札を原牌と為し、楮を影牌と為す」
② 紙幣のこと。江戸時代は、兌換の対象によって、銀札、金札、銭札、米札などがあり、大名旗本寺社公家、町村、あるいは信用ある個人などにより発行され、一定地域内やその信用力の範囲内に流通した。明治以後、政府により太政官札、民部省札が発行され、明治一五年(一八八二)からは日本銀行券が主体となった。
※御触書寛保集成‐二五・宝永二年(1705)八月「領内にて金銀札遣仕候分は、いつ頃より札遣仕来候哉」
道草(1915)〈夏目漱石〉五三「彼女は手垢の付いた皺だらけの紙幣(サツ)を、指の間に挟んで」
[2] 〘接尾〙 文書、書状、手紙、証文手形などを数えるのに用いる。

さね【札】

〘名〙 騎射用の甲冑(かっちゅう)を構成する細長い板。甲板甲札、甲葉ともいう。鉄または革で作り鉄札、革札といい、一領に八百枚から二千枚を連結して作る。一枚に二行一三の孔を普通とし、下の八孔を左右連結の横縫いにする孔、上の五孔を上下に続ける威(おどし)の孔とする。形によって、荒目(あらめ)札、敷目(しきめ)札、平(ひら)札、盛上(もりあげ)札、伊予札、小札、細(こまか)札などの種類がある。
平家(13C前)九「いくさといへば、さねよき鎧きせ、おほ太刀・つよ弓もたせて」
[補注]古くは木片であった可能性が高く、木製品であったならば、甲冑を付ければ、松の実のように頑丈であるという構造上・機能上の類似性から、植物の実と同じく「サネ」と訓じたと思われる。

ふんだ【札】

〘名〙 (「ふみた(札)」の変化した語。「ふむだ」とも表記) =ふだ(札)
霊異記(810‐824)中「兵士の腰を見れば、四尺の於(フムダ)を負ふ。〈国会図書館本訓釈 杜 布牟太〉」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「札」の意味・読み・例文・類語

ふだ【札/簡】

《「ふみいた(文板)」の音変化》
目的とする内容などを簡単に書いて、人に示したり渡したりする紙片や木片。「遊泳禁止の―を立てる」「質―」
神仏の守り札。「魔除けの―」→御札おふだ
娯楽場などの入場券。また、乗車券切符。「芝居の―」
電車の―を入れる箱」〈鴎外・田楽豆腐〉
カルタトランプ花札などの、1枚1枚の紙片。「―を裏返しに配る」「絵―」
巡礼などが、祈願のために札所の柱・扉・壁などに貼る紙片。「千社―」
日給にっきゅうふだ」に同じ。
「暫しも滞るをば御―を削らせ給ひ」〈栄花・花山尋ぬる中納言〉
[下接語]合い札赤札入れ札氏子札打ち札絵札大札納め札掛け札貸家札かど木札切り札極め札くじ配り札下馬げば小札護摩ごま下げ札質札しょう捨て札千社札立て札つじ手札取り札名札荷札値札花札場札貼り札引き札迷子まいご守り札むねめくり札宿やど・山札・読み札割り札
[類語]カードラベルレッテル荷札名札貼り札貼り紙付箋鑑札伝票証票証紙割り符ステッカーゼッケンシールワッペンタグネームプレート

さつ【札】[漢字項目]

[音]サツ(漢) [訓]ふだ さね
学習漢字]4年
〈サツ〉
文字を書いた板切れ。「表札門札
書き付け。証文。手紙。「一札鑑札書札入札
紙幣。「贋札がんさつ・にせさつ
切符。「改札出札
〈ふだ〉「名札荷札
[名のり]ぬさ

さつ【札】

[名]紙幣。
[接尾]助数詞。書状・証文などを数えるのに用いる。「証文を一入れる」
[類語]紙幣札びら札束新札新券ぴん札

さね【札】

よろいを構成する細長い小板。鉄または革製で、1領に800~2000枚をうろこ状に連結して鎧を作る。こざね。

ふみた【札/簡】

《「ふみいた(文板)」の音変化》ふだ。
「広さ一尺ばかりの板の―あり」〈霊異記・下〉

ふんだ【札】

《「ふみた(札)」の音変化》文字を記した板。ふだ。
「四尺の―を負ふ」〈霊異記・中〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【胴丸】より

…胴の前後を覆って,右脇で深く引き合わせ,裾に8枚の草摺(くさずり)を付属する。札(さね)とよぶ牛の撓革(いためがわ)または鉄の小片を横につらねてつづり合わせ,さらに縦に胴まわりを衡胴(かぶきどう)といって4段,立挙(たてあげ)といって正面上部の胸板につづく2段と背面上部の押付(おしつけ)につづく3段,草摺を5段,それぞれ革緒や糸の組緒で札を1枚ずつ細かに威(おど)しつけるのを常とする。草摺を8枚に分けているのは歩行しやすいためであり,13世紀末ころまでは,もっぱら歩兵用として兵卒の間に用いられた。…

※「札」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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